この連載では、筆者らが所属するブリティッシュ・アメリカン・タバコ・ジャパン(BATジャパン)のIT部門が、日本で独自にIT戦略を進める「ローカルIT」から全世界のIT戦略に基づく「グローバルIT」へと、どのように舵を切ったかを説明している。

 第1回ではIT組織、第2回ではプロジェクトの進め方、第3回ではITインフラ、第4回ではIT予算・投資を中心に取り上げた。

 最終回となる今回は、これまでとは少し目先を変えて、BATにおけるマーケティングを支えるIT(以下、マーケティングITと呼ぶ)の変遷を紹介したい。

ビジネス環境と営業スタイルに合わせてITも変化

 BATグループ全体のマーケティングITは、大きく三つに分けられる。まず、コンビニエンスストアやスーパーマーケットといった販売店を回る営業活動を支える営業支援システム。二つ目は、販売・出荷実績を分析するレポートシステムである。

 もう一つは需要予測システムだ。顧客の最近の嗜好を知るための分析データ、他社のプロモーション情報、自社の新商品情報、過去の販売実績などを基に、今後の需要を予測する。

 これらのマーケティングITは、タバコ市場を取り巻くビジネス環境や営業スタイルの変化と軌を一にして変わってきた。顧客との接点(タッチポイント)を例に取ると、以前は自動販売機が中心だったが、最近ではコンビニやスーパーマーケットが中心になりつつある。

 こうした変化に伴い、営業員の業務やITが提供する機能も変わってきた。以前は、新発売のたばこを携帯し、販売店を一つひとつ回って販売活動を展開するのが主要な業務だった。営業員は、商品や販売店の情報を入力し、最終的にレシートを出力する機能を備えた携帯端末を利用していた。