この連載では、筆者らが所属するブリティッシュ・アメリカン・タバコ・ジャパン(BATジャパン)のIT部門が、日本で独自にIT戦略を進める「ローカルIT」から全世界のIT戦略に基づく「グローバルIT」へと、どのように舵を切ったかを説明している。前回は、IT組織の変貌について取り上げた。

 今回はプロジェクトマネジメントに焦点を当てる。BATが実施した基幹システム刷新プロジェクトを例に取って、IT組織のグローバル化によってプロジェクトの進め方がどう変わったのかを中心に見ていく。

バックオフィス系のグローバル統合を進める

 BAT本社が2011年に「One IT」と呼ぶコンセプトを打ち出してから、日本のIT部門は、全世界で1500人が所属するグローバルIT組織の一員として位置付けられるようになったのは前回説明したとおりである。

 その後、2013年からバックオフィス系の基幹システム刷新を進めている。One ITの下、日本を含むBAT全体で業務やシステムの統合や標準化を図るのが狙いである。

 財務会計やサプライチェーン管理に関わる業務やシステムの統合はひとまず完了している。ただ、外部環境や事業戦略などは当初の想定から変化しているため、業務やシステムはその後も継続的に見直している。

 さらに現在は、国ごとに大きな差があり、標準化が難しい業務やシステムの統合に取り組んでいる。筆者は、人事管理システムをグローバルで導入するプロジェクトに関わっている。

 一つの国の拠点における業務やシステムを統合するのでさえ、必ずしも容易ではない。まして複数の国をまたがって統一するとなると、プロジェクトの難易度がより高まるのは容易に想像が付くだろう。A国では社員の給与計算を自前のシステムでカバーしているが、B国では外部業者に委託しているといった具合に、業務やITの状況は各国で異なるからだ。

 だからといって、全ての業務をグローバルで統一することを目指すのは現実的でない。国が違えば商習慣は異なり、商習慣が異なれば仕事の進め方は異なる。