弊社は食品メーカーですが、ITの活用に関しては競合他社に後れを取っています。そこで数年前から外部の会社や人材を活用しようとしているのですが、どのプロジェクトも成果が出ないまま失敗してしまいます。どのようなスタンスで支援してもらえばよいのでしょうか。
(中堅食品メーカー IT部門、企画部)

 かつてのPCやメール、社内ネットワークから、現在のクラウドや人工知能(AI)まで、業務におけるITの活用範囲は広がる一方です。日々現れる新しい技術やサービスを適切に選択して活用するには、外部の企業や人材を活用せざるを得なくなっています。

 筆者の感覚では、ユーザー企業のうち先進的にITを活用している企業ほど外部リソースを「うまく」活用しています。今回はその秘訣の一端を紹介しましょう。

 外部リソースの活用法は様々ありますが、大きく分けて「知る」「倣う」「任せる」の3種類になります。

 「知る」は、主に視野を広げるための“知識移転”です。例えば、セミナーやトレーニングの受講、コンサルタントによる専門知識の導入といった形で実施されます。

 「倣う」は、一緒に手を動かす“行動移転”。オンザジョブトレーニングやワークショップ、最近ではペアプログラミングやハックフェストという形で実施されることも増えてきています。

 そして「任せる」は、業務の一部を外部に委託する“責任移転”といえます。システム開発を外部に任せる委託(受託)開発やパッケージシステムの導入、業務そのものを外部に委託するアウトソーシングなどがあります。

 結論から言うと、外部リソースをうまく活用している企業は、「倣う」に重点を置いた活動に注力しています。逆に、失敗続きの企業は「知る」と「任せる」に偏った活用になっています。

 最大の違いは“主体性”の所在、わかりやすく言えば「自分たちで手を動かす」つもりがあるかどうか、です。

ITはもはや道具ではない

 企業におけるITの活用はかつては「計算機」であり、「筆記用具」と同様に人間が使う道具でした。業務は人間が行い、その道具としてIT機器が導入されていました。道具を納入するのは外部の業者の役割であり、発注者は納品された道具を使うことに専念していました。