働き方改革として、リモートワークでの遠隔地メンバーの参画を検討しています。初めての取り組みで不安があります。成功させるポイントがあるのでしょうか。
(大手システムインテグレーター/プロジェクトマネジャー)

 システム開発の現場は一般的なホワイトカラーの職場に比べ、良くも悪くも多様な勤務形態が観測できる場所です。約20年前に私が働いていた職場でも、昼過ぎに現れて深夜に帰る人、始発で出勤して日が高いうちにさっそうと去る人、なぜか職場で生活している人、こんな人たちがいました。

 最近は「今日はリモートワークなので」という言葉を耳にすることも珍しくありません。極端な例では、日本に住みながら米国西海岸の企業に勤務しているエンジニアもいます。

 しかし、いかに柔軟な働き方の風土があるとはいえ、「今日からリモートワークのメンバーが参加します」と、準備なしで既存チームに参画させても不幸を生むだけです。同じチームの中に異なる働き方が混在して、お互いがストレスを感じます。遠慮や不満の感情が、拒絶や排除という行動で表面化した頃には、時すでに遅し、です。

 そこでリモートワークを成功させる三つのポイントを紹介しましょう。

 一つめは「特別な存在を作らない」です。これは、オンラインで働く場合でも、オフラインで働く場合でも共通の鉄則です。勤務時間であれ、勤務場所であれ、マネジャーが「この人は特別な事情で」と言った瞬間、メンバーの思考や行動にストレスが生じます。お客様扱い、とでもいうのでしょうか。

 リモートワークを導入するなら、チームメンバー全員がリモートワークを始めるつもりで取り組んでください。目指すべきは「全員がリモートワーク可能な状態にする」です。メンバー全員が実際にリモートワークをするというのではありません。物理的なオフィスはそれまで通りで、多くのメンバーはそこに出勤して働きます。ただ、働き方の意識は「都合が良いからたまたま職場に出勤している」という姿を目指してください。

報告を命じるのは百害あって一利なし

 二つめは「報告が不要なコミュニケーション設計」です。

 遠隔でメンバーの姿が見えないと、マネジャーはどうしても不安になり「今日は何をしたか」「どんな成果物を作ったか」と逐一報告を求めたくなります。しかし、報告の強制は現代のマネジメントでは百害あって一利なしです。リモートワークではデジタルツールを使った仮想空間で仕事をします。その特性を生かし、活動そのものが可視化されて蓄積される、報告不要な環境を目指しましょう。