安定したITインフラを提供するために、技術者の「現場力」が求められている。ITインフラ技術者がどのように現場力を磨いてきたのか、その生の声を聞く。今回登場するITインフラエンジニアは、ネットワンシステムズの坂田 玲子さん。ネットワーク技術者養成スクールの講師を務める。

(聞き手は久保田 浩=日経NETWORK)


ネットワーク技術者養成スクール講師
ネットワーク技術者養成スクール講師
私の履歴書:文学部卒業後、医療機器会社の営業として勤務。同社倒産後に、通信事業者の事務として働くかたわら、イラストレーターを目指す。その後一念発起し、CCNAなどの資格を取得。その後ネットワンシステムズのネットワークアカデミーに転職し現在に至る。

坂田さんの今の業務について教えてください。

 ネットワンシステムズというネットワークインテグレーターに勤めています。弊社では、IT技術者を養成する「ネットワークアカデミー」というスクール事業も行っていて、その講師を担当しています。私自身は、米シスコシステムズの最高ランクの技術者認定資格であるCCIEを取得しています。

講師の立場から見て、ネットワーク技術者にはどのような勉強が必要なんでしょうか。

 まず基礎を押さえることです。ネットワークであれば、TCP/IPプロトコルの動きを学ぶことからはじめるべきです。こうした知識は後々重要になります。

 よく、業務は完璧だけれども基礎知識がない技術者の方がいます。ルーティングプロトコルのBGPは十分理解しているけれど、イーサネットについてはよくわからない人などです。「業務でネットワークをやってきたが、体系付けて勉強したことがなかった」という技術者は意外に多いのです。

 こういう方は基礎知識を押さえるべきです。基礎から順に学ぶことで、今後向かい合わなくてはならないトラブルを乗り越える力が付きます。基礎というのは得てして面白くないものですが、そこから始めるのが大事です。この基礎に「実践」を加えると、理解が深まります。

ネットワークアカデミーではどんな教え方をしていますか。

 講師の話を聞くだけでなく、ネットワーク機器の実機を触って学ぶ講座があります。つまり「実践」です。パケットキャプチャーをしてもらって、ネットワークを「見える化」して理解します。座学からそこまで一気にやってしまうほうが、理解が深いのです。

ネットワークアカデミーでの授業の様子。
ネットワークアカデミーでの授業の様子。
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実機を用いる授業もある。アカデミーのフロアには大型のネットワーク機器もあり、これを使った授業もある。
実機を用いる授業もある。アカデミーのフロアには大型のネットワーク機器もあり、これを使った授業もある。
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ネットワンの技術者向けの教育も担当しているそうですね。

 ネットワークアカデミーでは、ネットワンの新卒の新入社員の研修も行っています。2カ月間、新入社員を預かります。そこでみっちり、ネットワークやストレージなどのインフラ部分の基礎を勉強します。

 ネットワンでは、今年(2014年)の新入社員からは、営業職の社員でも1年目は技術職として現場に入るようになりました。1年目は全員技術職なのです。これは、全社で技術力を強化するのが目的です。営業職でも技術を知らなくては、仕事にならないと考えているからです。

 ネットワン社内では、社員が自主的に勉強会を開いたりもしています。社内の応用技術部という部署が中心になり、ベンダーごとの機器について社内向けにレクチャーを行います。ネットワークアカデミーが社内向けの勉強会を開くこともあります。