安定したITインフラを提供するために、技術者の「現場力」が求められている。ITインフラ技術者がどのように現場力を磨いてきたのか、その生の声を聞く。今回登場するITインフラエンジニアは、トライポッドワークスの遠藤 一義さん。セキュリティアプライアンス製品の開発を手掛ける。

(聞き手は久保田 浩=日経NETWORK)


セキュリティアプライアンス製品開発担当
セキュリティアプライアンス製品開発担当
私の履歴書:学生時代はプログラミングを学ぶ。電気工事などを行う会社に入社し、ネットワーク構築に携わった後、セキュリティソリューションを提供するトライポッドワークスに転職。現在に至る。

担当している業務内容を教えてください。

 トライポッドワークスというセキュリティソリューションベンダーで、セキュリティ機器の製品企画を主に担当しています。メールセキュリティに特化したアプライアンスやUTMなどです。

 実際に製品が完成したら、顧客のネットワーク環境に導入する際に技術的な支援をしたり、その後の保守などのサポートをしたりします。

これまでに行った、ネットワーク技術を覚えるための勉強法について教えてください。

 実は、「体系的で理論的な勉強」というのは、私の場合は後回しにしてきたように思います。私の場合は、なによりもまず「手を動かす」。なぜ手を動かすのかというと、「目の前のネットワークやシステムを動かす」ためなんです。目の前のネットワークやシステムを動かすことが仕事なんですから。

技術者になった当初はどうだったのでしょう。

 学校ではプログラミングを学んでいました。社会人になった当初も、まだ一般企業のITシステムはネットワーク化されておらず、コンピュータはスタンドアローンでした。それがある日、顧客から10BASE5でネットワークを組みたい、という依頼が来ました。

 その頃は、ネットワークなどの電気工事を行う会社にいました。ネットワークを組むという初めての業務に、「TCP/IPって何?」と思いながら、英語で書かれたUNIXのマニュアルを読み解いてましたね。UNIXワークステーションの機器ベンダーに、わからないところを聞いたりしました。上司と相談して、外部研修に行ったりもしました。その外部研修で教わったことを社内で情報共有しましたね。

 ここまでで私が言ったことは、前述したように、「目の前のネットワークやシステムを動かすため」の勉強なんです。理論的な勉強ではないんです。

「動かす」ことが仕事ですものね。いくら知識があっても、動かせなければ仕事にならない…。

 でも、「動かすため」の場数を踏むと、「動かないときはどこを見たらいいか」「どこを改善したらいいか」がわかってくる。すると面白いもので、動いたら、次に仕組みを知りたくなる。つまり、理論的な勉強をしたくなってくるんですね。

 私の場合、この時点からプロトコルや仕組みについての勉強が始まった感じです。もちろんそれまでも、プロトコルについては理解していたつもりですが、体系立てて理解していなかった。そこで、本屋で売っている技術専門書を購入したり、時折はセミナーに参加したりしました。

 この頃、「一生、勉強だな」と思いました。技術の進歩に付いていくには、勉強を続けていくしかないと思ったのです。

 幸い、会社にはルーターやスイッチの実機があり、座学ではなく、「動かす」勉強にはよい環境でした。「手を動かす」→「結果を予想」→「結果を見て、再度手を動かす」ということの連続でした。若い頃は数台のルーターを自腹で買って、家で試したりしていました。勉強を続けていくためでした。

90年代後半、遠藤さんが勉強のために熟読した「インターネットワーキング技術ハンドブック」。シスコシステムズの技術者が執筆している。
90年代後半、遠藤さんが勉強のために熟読した「インターネットワーキング技術ハンドブック」。シスコシステムズの技術者が執筆している。
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