どの職業でも、向いている人、向いていない人がいるのは致し方ない。システム構築のプロジェクトマネジャー(以下、PM)にも、もちろん向き不向きのタイプがある。「ダメPM」と呼ばれてしまう人たちの中で、特に複雑な気持ちにさせられるのが、ベテランSEとして間違いなく現場で活躍し、周囲の評価も高いだろうと思われる実直で誠実そうな人だ。このタイプの人が、不向きなPMに転向して苦戦しているケースを何度か見てきた。ここでいうベテランとは、40代後半以降をイメージしてほしい(図1)。

図1●そもそも不向きなPM
図1●そもそも不向きなPM
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 どこのベンダーもPM人材は不足気味である。案件数>PMの数、といった状況は珍しくない。そうなると、いくつものプロジェクトをSEとして経験してきたベテランならPMが務まるだろうということで会社からアサインされる。あるいは、中高年のSEは給料も高くなるので、ある年齢以上になるとより高額な単価の取れるPMへの転向を強く求められる場合もある。

 本人の都合や希望によってPMに転じるケースもあるだろうが、それならもっと若い時期に挑戦しているはず。「ベテランSEの新米PM」というのは、やはり会社都合が多いと推測する。

 もちろんこのベテランSEから転向してPMとして成功する人も少なくない。一方で、不向きな役割に四苦八苦して周囲から「ダメPM」の烙印を押されてしまう人たちがいるのも確かである。

 例えば、次のようなことがうまくいかない。まず、プレゼンテーションが苦手。コンペでPM指名プレゼンがあると、負けてしまう。また、ユーザーの要求を真剣に聞いてできる限り対応しようと考える。するとスコープが大きく膨らんでしまい、コストと納期がオーバーしてしまう。

 じっくりと自分のペースで仕事をしたくても、PMになると会議が仕事の大半である。口下手な場合が多く、相手のペースに引っ張られてしまう。

 PMの仕事の大半はコミュニケーションだ。素晴らしいプレゼンを行う、会議ファシリテーションをうまくやる、必要があれば会議で相手を言い負かす、といった類のコミュニケーション能力は個人差が大きい。訓練するなら若いうちからある程度やっていないと簡単には身に付くものではない。SE→PMというキャリアパスは一般的ではあるが、二つの職種は大きく異なる部分も多い。自分の適性をきちんと自己評価すべきである。