昔のテレビドラマの有名なセリフに「事件は現場で起きているんだ!」というものがあったが、プロジェクトの問題やリスクもまた現場で発生する。

 システム構築の「現場」は、フェーズによってさまざまだ。要件定義であれば、エンドユーザーへのヒアリングや要件決めの会議だろう。プログラム開発のフェーズであれば、コーディングや単体テストを行っている場所が現場である。そのほかフェーズによってさまざまな現場がある。冒頭で述べたように、PMの仕事で一番大事なのは多様な関係者とコミュニケーションを取って利害関係を調整し、プロジェクトを進行させること。だからPMはなるべく、コミュニケーションが発生する現場で仕事をしたほうがよい。

 ところが現場にはほとんど姿を見せず、定例の進捗会議や、ひどいケースではステアリングコミッティーにしか参加しないPMもいる。現場を見ないこのPMには2種類のタイプがある。

 一つは複数のプロジェクトを兼任で担当している多忙なPMである。プロジェクトを成功に導く優秀なPMは引く手あまただ。IT業界全体でPM人材は不足しているため、優秀なPMほどいくつも案件を持たざるを得ない。プロジェクトの規模や難易度にもよるが、いくら優秀なPMでも掛け持ちは二つ、頑張っても三つまで。ところが、四つも五つも案件を抱えているPMもしばしば見られる。これでは各プロジェクト現場を見ることはできない。

 結果として、メンバーから上がってくる報告や数字だけを頼りに、綱渡りのようなマネジメントをすることになる。掛け持ち過多の場合、一つのプロジェクトがうまくいかなくなると、その対応に時間を取られ、他のプロジェクトに気が回らなくなる。それで他のプロジェクトも次々におかしくなるといった負の連鎖に陥ってしまう。

 こうなるとPMの自力だけでは解決は難しく、他のPMと交代するとかサブPMを入れるなどの対策が必要になる。もっとも、これはPM本人の責任というよりは、安易に「できるPM」におんぶに抱っこのベンダー経営者が反省すべきことだろう。

 現場を見ないもう一つのダメPMは、理論好きの頭でっかちなタイプである。現場など見なくても、メンバーから上がってくる情報を分析すれば、プロジェクトのコントロールは可能と考えるタイプだ(図1)。

図1●現場を見ないダメPM
図1●現場を見ないダメPM
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