イオンリテールが2014年4月に格安スマホの先駆けとなる「イオンスマホ」を発売してから3年が経過した。MVNO(仮想移動体通信事業者)の契約数は倍増する一方、「Y!mobile」や「UQ mobile」といったMNO(移動体通信事業者)のサブブランドの攻勢もあり、市場は混沌としている。日経コミュニケーション/テレコムインサイド編集部が、座談会形式でMVNOの今後を展望した。

(進行は加藤 雅浩=日経コミュニケーション編集長)


イオンスマホが登場してからもう3年か。格安スマホはすっかり市民権を得たね。

記者A 総務省の調べによると2016年12月末のMVNOの契約数は1485万(MNOを除く)。2014年3月末は742万契約だったので、3年間でほぼ倍増しています(図1)。

図1●MVNOの契約数の推移
図1●MVNOの契約数の推移
出所:総務省データを基に作成
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 2014年10月末に総務省は「モバイル創生プラン」を公表し、2016年12月末までにMVNOの契約数を倍増(約1500万契約)という目標を掲げていました。この目標に若干届きませんでしたが、この3年間で700万契約ほど上積みし、市場として順調に育ってきたのではないでしょうか。通信モジュールや単純再販を除いたSIMカード型の契約数も、2016年12月末時点で807万契約。このSIMカード型が、いわゆる格安スマホ、格安SIMの実力値でしょう。

 このSIMカード型がモバイル市場全体に占める契約数比率はまだ5.3%であり、MNOと比べてまだ数が少ないという意見もあります。しかし見方を変えると、かつての第四の勢力だったイー・モバイルは、2007年3月にサービスを開始した約4年後の2011年1月末時点でも300万契約でした。ソフトバンクの子会社となった2013年1月時点でも430万程度の契約数だったので、今の格安スマホ、格安SIMはかつてのイー・モバイル以上の勢力ではないでしょうか。

記者B 10年近くMVNOの動向を追ってきたので、ようやくここまで来たかという実感が湧いています。今では、四半期ベースでMVNOの純増数がMNOの純増数を抜くケースも珍しくありません(図2)。

図2●MVNOとMNO(移動体通信事業者)の純増数の推移
図2●MVNOとMNO(移動体通信事業者)の純増数の推移
カッコ内の数字は前年同期の純増数と比較した増減値である。(出所:総務省データを基に作成)
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 しかしMNOの戦略次第で一瞬で淘汰される危うさもあります。今後はどうなるのか、不安な面があることも確かです。

記者C MVNO市場が大きくなっているのは確かですが、格安スマホ、格安SIM市場として見ると、Y!mobileがMNOであるにもかかわらず市場のトップにいます。収益面で見ると、どのMVNOも非常に厳しい。接続料の問題なのか、競争条件が変わると改善されるのか。こうした面にも光を当てないと、MVNOはやがて少数寡占になりそうです。様々なサービスにネットワークが組み込まれていく多様化がMVNOが目指す姿なのか。それともMNOを脅かす存在として、ある程度のプレーヤーが生きる市場を確立すべきなのか。このあたりも課題です。