「2020年の東京オリンピック(五輪)・パラリンピックは成長戦略に向けた旗印だ。2020年に向けた社会貢献とビジネスの両方を推進する動きは、社会価値創造を掲げる当社に合致している」。

 こう話すのはNEC 東京オリンピック・パラリンピック推進本部長の鈴木浩氏だ。NECは2015年2月、東京五輪・パラリンピックのゴールドパートナーとなった。パートナーとしての契約カテゴリーは「パブリックセーフティー先進製品」と「ネットワーク機器」だ。

 オリンピックは1カテゴリー1社の契約で、NECはこの二つの分野の製品やサービスを優先的に東京五輪・パラリンピックで提供できる。パブリックセーフティー先進製品には、生体認証や行動検知・解析、ドローンなどが、ネットワーク機器はSDN(Software Defined Networking)や無線ネットワーク機器、有線ネットワーク機器などが含まれている。

 「当社はカテゴリー契約を結ぶ分野に加え、スタジアムのIT化支援やサイバーセキュリティ、おもてなしなどの周辺分野への取り組みにも力を入れていきたい」と鈴木氏は強調する。

リオ五輪では顔認証でセキュリティ向上

 NECが2020年に向けた注力分野の一つとして掲げるのが、生体認証技術を使ったサービスの提供だ。同社は2017年3月16日、動画の顔認証技術のベンチマークで世界1位になったと発表。「生体認証は40年以上の実績がある。自信のある分野だ」(鈴木氏)。

 2020年の実用化に向けて、様々な分野で実証実験や製品化を進めるのが、世界一になった顔認証技術だ。セキュリティ用途を中心に40カ国以上で100システム以上を導入しているという。NECはこの分野に磨きをかけることで、2020年の東京五輪・パラリンピックに向けてニーズが高まる安心・安全分野のシステム構築を獲得したい狙いだ。

 NECはすでに顔認証を使ったサービスの提供を始めている。その一つが2016年のリオ五輪・パラリンピックの「Tokyo 2020 JAPAN HOUSE」で採用された、「ウォークスルー顔認証システム」だ。Tokyo 2020 JAPAN HOUSEは、リオ五輪・パラリンピックで日本をPRする拠点として設置された施設。そこで日本選手の記者会見などを開催していた。

 ウォークスルー顔認証システムは、事前に撮影・登録したメディア関係者の顔画像と、入場時のゲートに設置したカメラで撮影した顔画像を照合して本人かどうかを判断するシステムだ。事前に撮影・登録した顔画像はIDカードに紐付いている。メディア関係者は初回に顔登録をすると、後はIDカードをかざすだけで本人確認が出来る仕組みだ。

写真●リオオリンピック・パラリンピック「Tokyo 2020 JAPAN HOUSE」の記者会見場に設置した「ウォークスルー顔認証システム」
写真●リオオリンピック・パラリンピック「Tokyo 2020 JAPAN HOUSE」の記者会見場に設置した「ウォークスルー顔認証システム」
(写真提供:NEC)
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