3回に渡ってZenコアの内部構造などを解説してきた。そこで、いよいよ実際の製品について解説する。
AMDは2017年2月22日にZenコアを搭載した「Ryzen 7」の3製品を正式に発表。次いで3月16日には「Ryzen 5」の4製品を発表した。既にRyzen 7は小売店での販売が始まっており、日本での発売日だった3月3日には東京・秋葉原のPCパーツショップで深夜販売イベントまで実施されて、ちょっとしたお祭りになっていた。Ryzen 5は、Ryzen 7よりも低い価格帯の製品として、4月11日に発売される予定になっている。
仕様上の競合があまりいないRyzen 7
このRyzen 7とRyzen 5のスペックと価格をまとめたのが表1である。Ryzen 5は、まだ構造の詳細などが明らかになっていないので、3次キャッシュの容量は筆者推定である。
プロセッサ | コア/スレッド数 | 動作周波数 (かっこ内はターボ) | 3次キャッシュ | TDP | 付属CPUクーラー | 米国価格 | 日本AMDによる 希望小売価格(税別) |
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Ryzen 7 1800X | 8/16 | 3.6GHz (4GHz) | 16MB | 95W | 無し | 499ドル | 5万9800円 |
Ryzen 7 1700X | 8/16 | 3.4GHz (3.8GHz) | 16MB | 95W | 無し | 399ドル | 4万6800円 |
Ryzen 7 1700 | 8/16 | 3GHz (3.7GHz) | 16MB | 65W | Wraith SPIRE | 329ドル | 3万8800円 |
Ryzen 5 1600X | 6/12 | 3.6GHz (4GHz) | 12MB※1 | 95W | 無し | 249ドル | 3万800円 |
Ryzen 5 1600 | 6/12 | 3.2GHz (3.6GHz) | 12MB※1 | 65W | Wraith SPIRE | 219ドル | 2万7800円 |
Ryzen 5 1500X | 4/8 | 3.5GHz (3.7GHz) | 8MB※1 | 65W | Wraith SPIRE | 189ドル | 2万3800円 |
Ryzen 5 1400 | 4/8 | 3.2GHz (3.4GHz) | 8MB※1 | 65W | Wraith STEALTH | 169ドル | 2万1000円 |
なおモデルナンバーのルールは今回新しくなった。以前はAMD FX-XXXXやAMD AYY-ZZZZといった形で定義されていたが、今回からは図1のようになった。
7は「エンスージアスト」「プロシューマー」向け、5は「ハイパフォーマンス」、3は「ミドルクラス」となっているが、これは高性能PC向け、ミドルクラス、低価格機向け、と言い換えてよいだろう。千の位は世代、百の位は性能、末尾数字2桁がモデルを示すナンバーとなっている。
最後の英字は、Xが「XFR」機能付き、無印が通常版、GはデスクトップPC向けでグラフィックス内蔵型(Ryzenにはまだない)、Tは低消費電力版、Sは低消費電力でグラフィックス機能内蔵、Hは高性能モバイル向け、Uは標準のモバイル向け、Mは低消費電力のモバイル向け、という意味だ。T、H、Uあたりはインテル製CPUを意識した意味付けと言える。
Ryzen 7は、Zenの本来の仕様である8コア/16スレッド構成がそのままの仕様となっており、モデルごとの違いは動作周波数と消費電力のみである。インテル製CPUも含めて、これまでデスクトップPC向けに8コア/16スレッドというCPUはあまり例がなく、インテルの高性能PC向けCPU「Core i7 Extreme Edition」のシリーズが競合製品として挙げられる。
AMDは、Ryzen 7との比較において、Core i7-6900KやCore i7-6800Kを競合として位置付けている(図2)。いずれも、インテルの主力であるLGA1151ソケット用のCPUではなく、LGA2011ソケットに取り付けるサーバー向けCPUを転用した製品(開発コード名はBroadwell E)である。Ryzen 7 1700の競合であるCore i7-7700Kは、LGA1151用の最上位CPUだ。