物流業界の人手不足は深刻だ。この課題にIT活用で取り組み「攻めのIT経営銘柄」に2年連続で選ばれたエフピコ物流。IT改革をけん引した小泉哲代表取締役社長に聞いた。

エフピコ物流の小泉 哲代表取締役社長
エフピコ物流の小泉 哲代表取締役社長
1984年3月、セブン-イレブン・ジャパンに入社。1991年2月、物流管理本部チルド・米飯物流担当に着任。1999年9月、物流コンサルティング会社のイクロスを設立。2000年11月、エフピコと共同出資でアイ・ロジックを設立し、代表取締役社長に就任(現任)。2010年1月、エフピコ物流の代表取締役社長に就任(現任)(写真撮影:北山 宏一)
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どういった取り組みが評価されて、2年連続で「攻めのIT経営銘柄」に選ばれたのですか。

小泉 グループの一連の物流業務を支えるITインフラが、攻めのIT経営銘柄で評価されました。

 当社は食品容器トレーを生産するエフピコの100%子会社で、物流業務を担っています。エフピコの工場で生産された食品容器トレーを引き取り、全国8拠点にある自社倉庫で保管します。そこからオーダーを受けた商品を梱包してトラックに積み込み、食品工場や問屋、スーパーマーケットなど顧客の拠点に配送しています。

 トラックの配車・配送ルートを計画するシステム「ルートプランナー」や、配送状況をリアルタイムにモニタリングする「RD(リアルタイムデリバリー)チェックシステム」、ピッキング作業を音声で支援する「音声ピッキングシステム」の3つがITインフラの中心です。

ITを積極的に活用するようになった経緯を教えてください。

小泉 背景には、食品容器トレーを扱う物流会社ならではの経営課題があります。食品容器トレーは単価が非常に安いのです。エフピコの工場からは、50×55×70cmほどの大きさの段ボール箱に、ぎっしりと詰め込んだ状態で出荷されています。この段ボール1箱の食品容器トレーを合計しても4000~5000円ほどにしかなりません。

 一方、荷物の配送料金はサイズに比例します。段ボール箱は50×55×70cmほどと大きいため、宅配業者に配送を依頼しても500円以下では絶対に引き受けてくれないでしょう。それでも仮に500円かかるとして、それだけで段ボール1箱分(5000円)の配送に10%もの物流コストがかかるわけです。これに在庫管理費などが加わると、あっという間に30%を超えてしまいます。物流コストをいかに抑えるかは、エフピコグループで物流業務を担う当社にとって、大きな経営課題です。

 2010年ごろまでは、物流コストを押し上げる主な原因は倉庫や人員などをアウトソーシングしていたことでした。2010年ごろ、当社の倉庫全体に占める借庫の割合は25%ほどでした。当時からエフピコは売り上げが伸びていたのですが、売り上げが伸びると在庫も増え、必要な借庫も増えていきました。売り上げが増えると借庫も増えるという非効率が、ずっと続いていたのです。

 そこで自前で倉庫を持つようにしました。2010年から2015年の間に約380億円を投じて、自社の物流拠点を整備していきました。現在、借庫の比率はほぼゼロです。並行して正社員も少しずつ採用し、人数を増やしてきました。2010年は200人弱でしたが、現在は400人ほどと倍増しています。

 こうして自前の物流インフラを整えていくなかで、業務を支えるITインフラを見直す機運も高まったのです。見直しの第1弾となったのが、配車・配送ルートを計画するルートプランナーでした。