IoT(インターネット・オブ・シングズ)の製品やサービスを企画するのは楽しい。

 人がどこに居るか、車がどこを走っているか、荷物がどこにあるか。そのときの人や車、荷物はどんな状態なのか。これらは今後どんな行動をするのか。IoTは、IoTデバイス(モノ)から得た情報をこねくり回して、新しい体験(コト)を約束する。そして体験が集まれば、それは有益な情報が詰まったビッグデータ(ネタ)になり、新しい商売につながる(図1)。

図1●IoTが目指す企画の姿
図1●IoTが目指す企画の姿
[画像のクリックで拡大表示]

 新しいサービスを考え、多くのユーザーが使う未来を考えるのは、エンジニアにとって至上の喜びである。そこには夢と希望がある。そこではどんな誇大妄想な企画でも、どんな無茶な要求でも叶えたくなる雰囲気になる。

 だが、そこに落とし穴がある。IoTへの要求が際限なく広がり、技術やコストの面で無理難題な企画が通ってしまえば、その先は失敗しかない。一度夢破れれば、その組織ではIoTという言葉が禁句になってしまう。

 今回は、IoTを成功に導く「IoTの企画」の作り方を紹介しよう。

IoTの企画とは

 IoTの企画を見ていく前に、従来の製品企画からおさらいしよう。企画ではまずお金のやりとりを考え、次にモノとコト、つまりシステム構成と提供するサービスやその流れを決めていく。

 従来の業務システムはオンプレミス(構内)システムであることが多く、サーバーやクライアント機器、各種周辺機器、ネットワークなどは、自分たちが管理し制御できる構内に配置されることが多かった。この閉じた世界の静的な環境で、サービスを企画していた。システムの使われ方もデータの量や質も性能も障害対応も全部決まっていた。

 これに対してIoTは、使われるデバイスは種々雑多であり、インターネット上でIoTデバイスのセンサー情報などが大量に、そして多くは非定型なデータとしてやりとりをする。ITシステムも、オンプレミスのように手の内にあるとは限らない。

 IoTの企画では、開いた世界で動的に変わる「モノ」と、様々な使い方をする「コト」をそれぞれ企画しなければならない。

 IoTでは、モノ(IoT機器)ではなく、コト(サービスや体験)の企画が中心になる。そしてコトにより集まってくるビッグデータなどの「ネタ」をどのように使うかの企画をする。モノ作り企業がIoTに取り組むとすれば、戦略策定をモノからコト、ネタへと重点を移行させる必要がある。