IoT(Internet of Things)の文字が入っている書籍や雑誌が、書店で平積みになっている。

 これまで家電や組み込み系を扱っていた展示会も、主要テーマとして「IoT」と銘打つようになってきた。IoTの資格試験なるものも複数現れた。

 IoTという言葉の正体は何であろうか。日本語に直訳すると「モノのインターネット」というもので、これだけでは分かったような、分からないような不安な感じにさせる。

 IoTと聞いてすぐに連想するのは、ラズパイ(Raspberry Pi)のような小型コンピュータボードのほか、通信機能を持ったカメラなどの家電やコンピュータ周辺機器、自動車、ウエアラブル機器だろうか。GPSなどの各種のセンサーを持つスマホやタブレットも「モノ」に含まれるだろう(図1)。

図1●IoTとはバズワードなのか
図1●IoTとはバズワードなのか
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 だが、単にインターネットに接続しているだけなら、WiFiに接続したプリンターやカメラを含め、以前から家庭内でも当たり前に存在していた。

 あるいは、ITベンダーが「IoT」というバズワードを発明して、お金を引き出す魔法の言葉にしているだけではないのか。IoTとは一時だけの言葉で、時間とともに消えていくのではないか。

やはりIoTはバズワードである

 IoTは確かにバズワードである。だが、バズワードであることを心配する必要はない、と筆者は考えている。

 かつて人工知能(AI)は、流行と冬の時代を繰り返してきた。今回の人工知能第3次ブームも、これまでの熱気が去り、学習コストとその効果が見合わないと皆が気づけば、一時的には廃れていくだろう。だが、「人間の知的活動の一部を代替する」という人工知能のコンセプトが消えることはない。

 IoTも同じだ。たとえIoTの言葉は消えたとしても、「モノがインターネットにつながる」という世界は消えない。IoTがバスワードであるからこそ、IoTという言葉に踊らされず、その本質を理解することが求められる。

IoTを定義してみる

 では、筆者なりにIoTを定義づけてみよう。IoTとは、「インターネット上に各種のセンサーやアクチュエータなどのデバイス(これをIoTデバイスと呼ぶ)がつながり、それらが融合して一つのシステムになるもの」である。

 多数のセンサーデバイスが得た情報を、インターネットを通じてITシステムに送信し、情報を分析し、インターネットにつながっているアクチュエータデバイスを動作させる。この一連の情報処理が、システムとしてのIoTの基本である。

 ここで「アクチュエータ」とは、入力されたときに物理的な動きをするデバイスを指す。組み込みシステムやIoTシステムにおいては、広義にはディスプレイも、画面表示を担うアクチュエータとして捉える。例えば、スマートフォンにはディスプレイやバイブレータ、スピーカ、カメラ、LED照明などの多くのアクチュエータがある。

 図2にIoTシステムの構成を示す。

図2●IoTシステムの構成
図2●IoTシステムの構成
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