2017年3月、米OracleはOracle Database(DB)の新版「Oracle Database 12c Release 2(12.2)」のオンプレミス版の出荷を始めた。オンプレミスでのOracle DBの新版の登場は3年8カ月ぶりとなる。

 実は12.2のオンプレミス版の出荷から半年前の2016年9月、12.2のパブリッククラウド版の提供は始まっていた。米Oracleは「クラウドファースト」として、12.2で初めてパブリッククラウド版の提供から始めたのだ。その後、DB専用機の「Oracle Exadata」向けを2017年2月に出荷、最後にオンプレミス版の提供開始となった。

 「12c」の「c」は「クラウドコンピューティング」を指すように、12cでは、クラウド環境での利用を前提としたマルチテナント・アーキテクチャーを実現。12.2では「Oracle Real Application Clusters(RAC)」をマルチテナント型のDBに最適化したり、スケールアウト可能なノードを64から数百に拡充したりするなど、従来からOracle DBが持つ機能も強化している。

 米Oracleがクラウドシフトを強調する中、Oracle DBはどのような方向性で進化していくのか。そしてOracle DBのユーザーやパートナーは今後、DBをどのように考えるべきなのか。米OracleでDB開発の技術トップを務めるアンディ・メンデルソン氏に聞く。


米Oracleはクラウドシフトを進めている。一方で日本にOracle Cloudのデータセンター(DC)はなく、日本のOracle DBユーザーやパートナーは、今後どのようにすべきか見通しが立ちにくい状況だ。

 パブリッククラウドを利用してほしいという気持ちはある。しかし我々はオンプレミス、パブリッククラウド、そして顧客のDCを利用してクラウドサービスを提供する「Cloud at Customer」と、様々な選択肢を用意している。

写真●米Oracle データベース・サーバー技術担当 エグゼクティブ・バイスプレジデントのアンディ・メンデルソン氏
写真●米Oracle データベース・サーバー技術担当 エグゼクティブ・バイスプレジデントのアンディ・メンデルソン氏
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 日本では富士通と提携し、富士通のDCからパブリッククラウドの一部を提供する。このサービスは富士通のクラウドサービス「K5」と連携して利用できる。もう一つ、Cloud at Customerも活用してほしい。顧客企業の日本のDCからサービスを提供できる。日本のユーザーの場合、Cloud at Customerというオンプレミスの延長でクラウドを利用できる環境が向くのではないだろうか。

コアの機能に投資を続ける

日本のOracle DBユーザーの中には、オンプレミスでの利用を続けたいというユーザーも多い。

 クラウドへ移行するかどうかは、最終的に顧客が決定すること。「(クラウドに)移行してほしい」と無理に促すことはない。

 また我々はオンプレミスのユーザーを放置することはしない。リレーショナルデータベースのコアの機能にも投資を続ける。ただ将来、競争に勝つためには最高のDBを提供するだけでなく、それをクラウド上で再現することが必要だと考えている。