「Oracle Database(DB)の利用を止めるか、それともOracle DBを徹底的に使い倒すか。Oracle DBのユーザーが今、採るべき対策の選択肢はこの二つだ」。ガートナー ジャパン リサーチ部門アプリケーションズ データ・マネジメントの一志達也 主席アナリストはこう強調する。

 Oracle DBのユーザー企業は今、大きく三つの問題を抱えている。一つは「更新時調整料金」と呼ぶ制度の適用によって毎年Oracle DBの保守料金が2%以上、値上がりすること。二つめは、ライセンス体系が頻繁に変わること。そして三つめが、開発元である米Oracleや日本オラクルの急速なクラウドシフトに追随するかどうかを見極めなければならないことだ。

 特にOracle DBのユーザー企業にとって一つめの問題は深刻だ。現状のままOracle DBの利用を続ければ、IT予算に占めるOracle DBの保守費は上がり続ける。ユーザー企業はOracle DBが稼働するハードウエアの更改のタイミングで、何らかの手を打つ必要があるのは間違いない状況だ。

仮想化環境でも物理コアに課金

 さらにハードウエアの更改を前にしたユーザーを悩ませる問題がある。仮想化環境でのOracle DBの利用だ。米Oracleはサーバーに搭載されている物理コアに対して課金するライセンス体系を採っている。仮想化環境で利用する場合、Oracle DBが稼働する仮想マシンが2コア分であっても、サーバーが8コア搭載していればOracle DBのライセンス料金は8コア分必要になる。

 サーバーの更改は一般的に5年おきだ。5年経って以前利用していたサーバーと同等のサーバーにリプレースしようとすると、搭載コア数が増えているケースがある。その結果、「仮想化環境で利用しようとすると、さらにOracle DBのライセンスが必要になるといった事態が発生する」とアシスト データベース技術本部ビジネス推進部の岸和田隆部長は話す。

 こうした状況を解決するためにOracle DBのユーザー企業は、Oracle DBの利用を止める「脱Oracle」を実施するか、Oracle DBの機能を徹底的に使い倒す「続Oracle」を進めるかを決断する必要がある。「いずれの方法も簡単ではないが、何もしないという選択肢はない」とガートナー ジャパンの一志 主席アナリストは強調する。

ハードルが高い既存システムの「脱Oracle」

 Oracle DBの保守料金を抑える手段の一つが、価格の安い別のDBへの変更だ。DBの適用範囲によっては、使い勝手がOracle DBと変わらないケースもある。「少しずつOracle DB以外のDBを試しながら、代替案を持って選択できる環境を用意することが重要だ」と一志 主席アナリストは話す。

 しかし脱Oracleは「ハードルは高いので覚悟が必要だ」と一志 主席アナリストは指摘する。その理由は大きく二つある。一つは人的な問題だ。

 社内でOracle DBのエンジニアを抱えている場合、その人の持つスキルやノウハウが無駄になってしまう。「基本は同じDBというソフトウエアであっても、性能の出し方などちょっとしたノウハウがDBごとに異なる。こうしたノウハウの蓄積がなくなることは、DBの障害につながりかねない」(ガートナーの一志主席アナリスト)。