この連載では、ネットワーク管理の自動化は主に構築、設定、運用の三つのフェーズに分けられることを説明しました。前回は、その一つである構築フェーズの自動化機能である「Zero Touch Provisioning」(ZTP)を紹介しました。ZTPを用いることで、オペレーターの負荷を減らしつつ、サービスインまでの時間を短縮できます。

 次のフェーズである設定フェーズは、サービスに必要なコンフィグ(設定ファイル)を作成し、機器設定を反映させる工程になります。このフェーズでは、サービスインしている機器に対し、顧客追加やサービス追加などのオーダーに応じて、機器へ設定を追加していくことになります。実際にはユーザー追加や変更などのサービスオーダーを受領した後、対象機器のコンフィグ作成、設定手順書の作成、手順書レビュー、本番作業という業務が発生します。このフェーズでは、次のような問題がしばしば発生します。

大量のコンフィグへの対応

 サービス立ち上げ時に大量の機器をセットアップしなければならないケースや、台数は少ないけれども複雑なコンフィグを要求されるケースがあります。従来は手動もしくは専用のスクリプトなどで対応していましたが、手動では作業ミス、専用スクリプトでは再利用性の低さやコードメンテナンスなどの問題が発生します。

作業時間の短さ

 作業には実施期限を設定しますが、余裕をもった期限を設定できることはあまりありません。ネットワークエンジニアは、常に作業時間を短縮するためのアイデアを絞っていることと思います。全体作業時間を短くするため、1台当たりの作業工程数を削減するだけでなく、工程あたりの作業時間を低減する工夫が必要になります。

正確な作業の必要性

 作業を効率化しても、作業品質を低下させてしまっては、トラブルが発生する可能性が高まり、逆に全体的な工数の増加につながります。作業の効率化と同時に、正確性を高いレベルで維持しなければなりません。

 こうした問題を解決するには、クラウドのインフラ構築で使われている手法が有効です。クラウドの仮想サーバーをセットアップする際には、OSのセットアップ、アプリケーションパッケージのインストールや設定、固有サービスの設定といった複数の工程があります。これらを「構成管理ツール」を使って自動化するのが一般的になっています。

 構成管理ツールを利用することで、詳細手順書や大量のセットアップマニュアルと格闘することなく、必要な環境をスムーズに用意できます。今では、こうしたアプローチを仮想サーバー環境だけでなくネットワーク環境にも適用できるようになりました。