火を噴くプロジェクトは時間との闘いだ。TISの坂本雅也氏(生産革新本部 プロジェクトマネジメント部長 プロジェクトマネージャ)は、頓挫した自治体向けレガシーマイグレーションで、厳しい納期での品質確保を担った。

威信をかけて納期を守る

坂本 雅也氏
坂本 雅也氏
TIS 生産革新本部 プロジェクトマネジメント部長 プロジェクトマネージャ

 プロジェクトは2011年にスタートしたが、翌年夏に頓挫した。スキルのミスマッチで基本設計が終わらない。進捗は遅れ、予定の2014年1月の稼働はほぼアウトの状況だった。

 だが「威信をかけたプロジェクトだ。納期は絶対に守らなければならない」。こうした厳命とともに、坂本氏は幹部から火消し役を任された。

 早速、現場を訪れると、その状況に驚いた。まるでメンバーに危機感がないのだ。常時200~300人のメンバーがいるが、黙々と作業をこなしていた。

 「本当に問題が発生しているのか」。坂本氏が課題一覧を見ると、その数は500以上あった。先行してオフショア先に回していた基本設計への質問も500件を超えていた。WBSは粗く、指揮情報伝達系統も麻ひ状態だった。

 問題は、約800に及ぶ機能をどうやって期間内に開発するか、だ。スコープの甘さを見直してスケジュールを引き直すが、とても間に合わない。コスト増は認められるが、品質面の不安が募る。そこでまず、業務や設計に強いベテランを招集する一方、PMOやインフラ、アーキテクチャー、移行といった専門の支援部隊を編成した。

 さらに坂本氏が取り入れたのが「TODO機能リスト」と呼ぶべきものだ。機能に優先度を付けるのはよくあるが、一般に機能の影響度や重要度で付ける。これに対してTODO機能リストは「やるべき順」として優先度を判定。具体的には、その機能がなければテストができない、リリース後にすぐに使うなど、あくまで時間軸の観点で優先度を付けた。当然、年次のバッチ処理などは優先度が下がる。

 その上で、機能別にユーザーの数や種類を想定し、機能がないと影響を受ける範囲を優先度に付加。そして全機能をA~Eの5段階でランク付けした。