室脇 慶彦氏
室脇 慶彦氏
野村総合研究所 理事

 「プロジェクトのトラブルは、すべて品質に起因する」。こう断言するのは、数々の難関プロジェクトを解決してきた野村総合研究所の室脇慶彦氏(理事)だ。室脇氏は社内のプロジェクトマネジャー育成を手掛けており、トラブル時には「品質」に着目するようアドバイスしている。

 なぜ「品質」なのか。トラブルとして表面化するのは、進捗遅れやコスト超過もある。だが室脇氏は「品質問題によってスケジュールが遅れ、それで要員を追加してコストが超過する。どんな問題も起点は品質だ」と話す。

 最近のプロジェクトは、大きなプロジェクトを小さな単位に分割し、小規模プロジェクトとして進めるケースが増えている。室脇氏は「小規模の場合、火消し時は関ケ原のような大規模な戦い方でも、桶狭間のような中規模な戦い方でもない。サムライ同士の戦い方こそ求められる」と強調する。

問題個所をドリルダウン

 サムライのように素早く原因を特定し、すぐに対策を立て行動する。「サムライ分析」とも呼ぶべき室脇氏の火消し術とはどのようなものなのか。

 室脇氏のサムライ分析は一刀両断型だ。まず、どんなトラブルプロジェクトでも「品質不良」が原因として切り込む。進捗遅れは品質不良に起因し、コスト超過は進捗遅れに起因する、という因果関係があるからだ。

 次に品質不良を「スコープ」「設計・実装ミス」「テストの不備」の三つの観点で問題個所をドリルダウンする。その他の原因には目を向けない。「必ず三つのどれかが品質不良を引き起こす」(室脇氏)という判断である。ここでもサムライ分析の潔さが際立つ。

原因と対策を瞬時に導く「サムライ分析」
原因と対策を瞬時に導く「サムライ分析」
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 スコープは一般に、規模尺度で判断するが、室脇氏は違う。「ファンクションポイントなどの規模尺度は、ゴールまでの直線距離を示すもの。実際のプロジェクトでは、そのゴールに至るまでの山や谷がある。これを分析しなければ、スコープの問題を解決できない」。室脇氏はこう指摘する。