PwCコンサルティングの中野大典氏(シニアマネージャー)がプロジェクト立て直しの要請を受けたのは、リリース予定の2カ月前。外資系製薬メーカーのデータマート構築プロジェクトは、2015年12月に5人体制でスタートし、2016年6月にリリースする予定だった。だが開発が一向に進まず、メンバーの1人が過重なストレスで離脱した。

メンバーのスキル不足が露呈

中野 大典氏
中野 大典氏
PwCコンサルティング シニアマネージャー

 「どうなってるんだ。課題一覧が2カ月間更新されていない。しかも50件ほどあるじゃないか」。現場に入ってまずこの惨状に驚いた。WBSもまともなものがなかった。小規模とはいえ、提案時の粗いWBSが全く詳細化されていない。要件の粗さも目立った。

 メンバーの話を聞いて、原因はユーザー側の要求の曖昧さにあると想定していた。だがよく調べると、どうやら問題はメンバーのスキル不足だった。

 このシステムは、三つの既存システムと4種類のデータ群からETL(Extract Transform Load)ツールを使ってデータマートを生成するもの。販売データや医師向け営業担当(MR)の行動履歴が対象で、複雑な変換ロジックもある。機能こそ作らないが、ETLツールを使う技術力と、データの意味を知る業務知識が必要だった。

 「スキル不足は否めない」。すぐに上長にプロジェクトの状況を説明し、体制の立て直しを迫った。厄介なのは、どうやってメンバーを調達するか。

 そこで実践したのが、俊敏にメンバーを調達する火消し術だ。強化ポイントは三つある。

 一つは現場の作業を迅速かつ確実にこなすメンバーだ。若くて元気なメンバーなら申し分ない。

 二つめは技術メンバー。実はユーザー側から指定されたETLツールは、国内でほぼ導入実績がない。当然専門スキルを持つ技術者が不在で、既存メンバーは学習しながら開発していた。

 最後は、マネジメント支援メンバーである。WBSや課題一覧などプロジェクト遂行に不可欠な管理ドキュメントの作成や、問題点の分析、解決策を提示してくれるメンバーがほしい。

弱体チームが蘇る「俊敏メンバー調達」
弱体チームが蘇る「俊敏メンバー調達」
[画像のクリックで拡大表示]