新谷 信一氏
新谷 信一氏
富士通 社会基盤システム事業本部 第三システム事業部 シニアマネージャー

 時間がない中で大量の作業をさばくには、作業の性質を見極め、それぞれ適切なメンバーをアサインする必要がある。無理な作業の並行化(ファストトラッキング)や要員追加(クラッシング)はリスクを伴う。「フォーメーション」の見直しはプロジェクトリカバリーの中でも極めて重要だ。

 大手新聞社のCMS(Contents Management System)刷新プロジェクトに火消しに入った富士通の新谷信一氏(社会基盤システム事業本部 第三システム事業部 シニアマネージャー)。新谷氏も、このフォーメーションの見直しに成功した1人だ。

 プロジェクトは2012年春に開始し、リリースは2013年12月を目指していた。ところがユーザーテストに入った2013年9月、機能がない、動かないといったトラブルが発生。富士通社内でも問題となり、稼働3カ月前に新谷氏に火消しの任務が下った。

基盤の設計問題で実装できない

 プロジェクトに入るとてんやわんやである。何しろ必要な機能が実装できていない。新谷氏は王道プロセスの「人を見る・人に聞く」「モノを見る」「シナリオを見る」というステップで状況を見極めていった。

 するとリリースは3カ月後だが、プロジェクトの延伸は避けられなかった。大きな問題は、基盤部分の設計にあった。

 CMSに登録する記事にはタイトルや本文だけでなく、テーマや時刻、画像設定情報など、さまざまなパラメーターが入る。当初の計画では最小限のパラメーターしかなかったため、それに合う基盤になっていた。それがプロジェクトの途中でいくつものパラメーターが追加。そのパラメーターを扱う機能を動作させる上で、いくつもの問題が発生したのである。

 すぐに新谷氏は基盤部分の設計やり直しを指示した。だが「それでは間に合わない」と既存メンバーらは反発。「当初の基盤でも何とかなる。やり直しでは間に合わない」と訴えた。