一岡 敦也氏
一岡 敦也氏
アビームコンサルティング プロセス&テクノロジービジネスユニット ITMSセンターシニアマネージャー

 トラブルプロジェクトの原因の一つに、作業や成果物を構造化したプロジェクト計画「WBS(Work Breakdown Structure)」の不備がある。メンバーらはどう動いていいか分からない。まさに、ゴールまでの道筋が見えない状態だ。

 2015年12月、アビームコンサルティングの一岡敦也氏(プロセス&テクノロジービジネスユニット ITMSセンターシニアマネージャー)に声が掛かったプロジェクトもそうだった。東南アジアのある国で開発する金融向け基幹システムの刷新プロジェクトだ。規模は30億円程度と小さくない。ユーザー側が内製でスクラッチ開発し、パッケージ導入を現地のベンダーが手掛けた。

 ところが2016年4月の稼働が危うい状態になり、一岡氏に声か掛かった。現地を訪れて感じた印象は「まさに濁流」。リーダーも作業に入り、全員が目の前の作業に忙殺されていた。

 一岡氏は関係者にヒアリングし、成果物を確認した。すると成果物が完成していないものが山ほどある。仕様書を見るとメモ同然だった。

 WBSを見てさらに驚く。レベル2程度しか記述されていなかったのだ。レベル2とは、システム全体を分解した機能レベルだ。これではどんな作業か分からない。段階的詳細化(ローリングウェーブ)もされていない。

全作業をメンバーとコミット

 「すべてはWBSに問題がある」。一岡氏はこう確信し、約1週間かけてWBSを詳細化していった。まずレベルは6段階まで落とし込む。レベル1がフェーズ、レベル2が機能、レベル3が成果物だ。さらにレベル4として成果物の章単位などレベル3を分解した作業。レベル5ではさらにそれを節単位などに分解した作業とした。通常ならここまでの分解が多いだろう。

 だが一岡氏は、これでもまだ足りないと考え、さらにレベル6まで分解。「作業というよりもTODOに近い」(一岡氏)と表現するように、レベル6の粒度は1~3人日程度とした。細かい管理単位はオーバーヘッドになるが、メンバーらが迷わないことを優先した。