「ITに全く関係ない分野からITに飛び込んで活躍しているエンジニア」など、何らか“越境”を経験したエンジニアを「越境エンジニア」と名付け、1カ月に一人ずつインタビューを掲載する。今月取り上げるのは、一般向けの投資サービスを手掛けるFinTechベンチャーの「FOLIO」でCDO(Chief Design Officer)を務める広野萌(ひろのはじめ)氏。デザイナーの立場から様々なアイディアをFOLIOにもたらし、同社のサービス開発をリードしている。最終回である今回は、FOLIOでの取り組みやデザインに対する考えを聞いた。

(聞き手は大森 敏行=日経NETWORK


前回から続く)

 FOLIOで運営する株式投資サービスでは、ユーザーが取引用の口座を開設する部分は、特に力を入れて開発しました。以前、個人的に口座開設に苦労したので、これを反面教師にして何とかデザインの力でシンプルにしたいと思ったのです。

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 ヤフー時代の前半はUX(ユーザーエクスペリエンス)系の部署にいたので、ユーザーテストやユーザーインタビューのフローはわかっています。そこで、口座開設まわりの開発では「インタフェースをデザインしてユーザーテストを繰り返して改善する」ということを何度も繰り返しました。週に1回、知らない人に来てもらい、プロトタイプを触ってもらって意見を聞きます。その意見を基に改善し、次の週に違う人にユーザーテストに来てもらいます。開発の最初の半年間は、これをずっと続けていました。

 自分も体験しましたが、証券サービスはユーザーが口座を開設するのが大変です。本人確認書類を複数用意しなければなりません。マイナンバー、取り引きする目的や動機、貯金、年収、所属企業、氏名、住所、性別、生年月日など、ユーザーが入力しなければならない項目は多岐にわたります。ユーザーがこれらをすべて入力するのは本当に面倒です。これをなんとかするために、ユーザーテストを重ねに重ねて一番スムーズにできる形を作り上げていきました。