「ITに全く関係ない分野からITに飛び込んで活躍しているエンジニア」や「ITとIT以外の分野の境界を行き来しながら成果を上げているエンジニア」を「越境エンジニア」と名付け、1カ月に一人ずつインタビューを掲載する。今月取り上げるのは佐藤治夫氏。Pythonに特化したシステム開発会社であるビープラウドの創業者だ。今回は、ビープラウドがPythonに特化した経緯や理由、リモートワークの全面採用などについて聞いた。

(聞き手は大森 敏行=日経NETWORK


前回から続く)

 ビープラウドを設立してから最初の2年弱はJavaでシステム開発をしていました。しかしJavaだと他の企業と差別化できません。Javaエンジニアの採用を大手企業と争うことになります。「本当は大企業に入りたかったが入れなかった」という人に来られても困ります。

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 大手企業と採用で競争しないためにどうすればいいかを考えた結論が「Pythonの採用」でした。2008年4月にPythonによる受託開発を始めました。

 Pythonを選んだのは、まわりのエンジニアのPythonに対する評価が高かったためです。開発生産性と保守性を兼ね備えていて、性能も問題ない。ただし、仕事で使っている人は少ない状況でした。Pythonを選択するのは思い切った決断でしたが、やるしかないと思いました。「普通の企業で終わりたくない」という気持ちが大きかった。

 Pythonを前面に押し出すようになると、Pythonコミュニティからエンジニアを紹介してもらえるようになり、次々に社員増えていきました。社員数は、Pythonの採用から2年で15人くらい、それから2~3年で30人くらいになりました。ちなみに現在の社員数は36人です。

 言語は道具であり、経営者は「サービスや価値にフォーカスすべきであり、道具にこだわるのはおかしい」と考えるのが普通です。一方、ビープラウドはPythonという道具にこだわっているからこそ、専門性が生まれました。また、Python好きが集まってくることで会社自体がコミュニティになっています。あえてPythonにこだわることで「会社の色」を出しているのです。

 その頃からRuby on Railsがはやっていましたが、Rubyという選択は普通です。「普通を選んだ時点で経営者として負けだ」と考えていました。

 自分の中には「20対80の法則」という考え方があります。20%か80%かを選ぶとき、経営者は20%の方を選ばないといけない、ということです。1回の判断が0.1%や1%だと偏りすぎですが、20%の判断を繰り返していると、0.2×0.2×0.2×…と掛け算で希少価値がある存在になれます。言語の判断も選択の一つ。エンジニアが5人いたら、Pythonを選ぶ人が1人いてもいい。

 従来のPythonの案件はほとんどがWebシステムの開発でしたが、2016年後半からデータ分析の仕事が急に増え始めました。データ分析をやりたいからPythonを学びたいという企業や個人の問い合わせも来るようになりました。例えば、ある医師がPythonでデータ分析を行いたいというので、マンツーマンでインストールから始めて3日間教えたりしました。