「ITに全く関係ない分野からITに飛び込んで活躍しているエンジニア」や「ITとIT以外の分野の境界を行き来しながら成果を上げているエンジニア」などを「越境エンジニア」と名付け、1カ月に一人ずつインタビューを掲載する。今月取り上げるのは村上原野(むらかみげんや)氏。縄文土器にインスピレーションを受けた創作を行っている陶芸家だ。同時にネットでは「狂える中3女子ボレロ村上」というハンドルネームでC++に詳しいプログラマーとしても知られている。今回は、メタプログラミングと縄文アートに取り組む理由などを聞いた。

(聞き手は大森 敏行=日経NETWORK


前回から続く)

 高専でメタプログラミングを独学で始めた頃は、そうした技術的な話ができる知り合いはいませんでした。技術的な交流ができるようになったのは、就職してTwitterを始めてからです。C++をキーワードに検索して、出てきた人たちを上からフォローしていきました。それが高橋晶さん(現在はPreferred Networks)や江添亮さん(現在はドワンゴ)といった有名な方々です。

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 当時は自分のプログラミングの技術的な水準がどのくらいかがわかりませんでした。そうした人たちとネットを通じて話してみると、私にはソフトウエア開発の実務の知識はありませんが、メタプログラミングは専門的な部分まで理解していることがわかりました。そこで、さらにそれを深めてみようと思ったのです。

 私はもともと実用的なアプリケーションを作るのにあまり興味がありません。最初にBoostライブラリに触れたことで、アプリケーション開発の上のほうのレイヤーに関わらない低水準のライブラリに特に興味がありました。そこでたまたま出会ったのがテンプレートメタプログラミングでした。

 この分野にはある種の技術的な普遍性があります。人間がどう使うかにかかわらず、純粋に理論に近い分野だと思いました。そこを追求することが面白かったのです。個人の特性にもよりますが、自分にとっての「ものづくり」では、そうしたものを追求するのが一番しっくりきました。

最古の技術から最新の技術まで

 IT技術は現代で一番ホットで盛んな分野です。一方で縄文はある意味、最古層にある分野の技術です。そうしたことをアーティストになって特に強く意識するようになりました。