「ITに全く関係ない分野からITに飛び込んで活躍しているエンジニア」や「ITとIT以外の分野の境界を行き来しながら成果を上げているエンジニア」などを「越境エンジニア」と名付け、1カ月に一人ずつインタビューを掲載する。今月取り上げるのは村上原野(むらかみげんや)氏。縄文土器にインスピレーションを受けた創作を行っている陶芸家だ。同時にネットでは「狂える中3女子ボレロ村上」というハンドルネームでC++に詳しいプログラマーとしても知られている。今回は、縄文文化に深く影響を受けた生い立ちやプログラミングとの出会いなどを聞いた。

(聞き手は大森 敏行=日経NETWORK


 私の肩書は縄文造形家であり、陶芸の縄文アートを手掛けています。縄文アートとは、日本の縄文時代の造形やスピリットにインスピレーションを受けたアートの総称です。私はその中でも、現代の窯で焼く陶芸とは全く異なる縄文時代の焼き方、土、造形技法といった縄文そのものの技法を再現して創作を行っています。

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 父である猪風来(いふうらい)もアーティストで、縄文アートを手掛けていました。父の世代が、実用的な縄文土器を再現した最初の世代です。父はもともと千葉で創作活動を行っていましたが、1986年頃に北海道に渡って山の中に土地を借り、自分で竪穴式住居を建てて家族で移住しました。そして生活と創作をする修行に入りました。

 私には兄が2人います。兄はその頃には既に生まれていて、一緒に北海道に渡って暮らしていました。自分は移住の翌年、1987年に生まれました。敷地内には竪穴式住居と別の母屋があり、両方で暮らしていました。小さい頃から半分くらいは竪穴式住居で寝起きしていた感じです。

 生まれたときからそうした生活で、それが自然でした。枕元で父が縄文土器を作っているといった環境だったので、縄文の暮らしや芸術が自分のルーツになっています。今でも自分の意識としては、現代人が縄文に学んでいるというよりは、縄文人が現代の技術を学んでいるのに近いと感じます。

ロボコンとメタプログラミングに出会う

 2003年に中学校を卒業して札幌市立高等専門学校(札幌市立高専)に入学しました。その高専は現在は札幌市立大学になっています。入ったのはインダストリアル・デザイン学科で、「工業デザインコース」や「環境デザインコース」といったいろんなコースがありました。自分は「建築デザインコース」を専攻しました。