ICTを平和目的に積極的に活用しようという動き「PeaceTech」。その推進者の1人である金野索一氏が、PeaceTechのキーパーソンに会い、その取り組みや思いを語ってもらう。(菊池 隆裕=日経BP総研 イノベーションICT研究所)

 平和のためのテクノロジー利用である「PeaceTech」を体現している日本人経営者、6人目のゲストは北浦健伍氏だ。2016年6月に、日経FinTechが主催する「Nikkei Fintech Conference2016」のピッチコンテストで最優秀賞を受賞した「AGRIBUDDY(アグリバディ)」という農村向けスマホアプリ開発の指揮を執った人物である。実は同氏は、日本で貸金業を長年営んでいた。

AGRIBUDDY CEOの北浦健伍氏
AGRIBUDDY CEOの北浦健伍氏
(写真:Edo Tech Global)
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 「儲かっていましたが、1日も早く辞めたかった。大手ではなかったので、私たちのところに現れた人は、かなり追い詰められている。その結果、『北浦がいなくなってほしい』と考える人が、私の周りに多くなっていくのです」(北浦氏、以下同)

 バングラディッシュのムハマド・ユヌス氏は、同じ貸金業でも、グラミン銀行を創設してノーベル平和賞を受賞した。この違いは何なのだろうと考えるようになった。

 「違いは、お金を貸すときの想いだと気がつきました。目指す世界が違うと、ここまで違うのかと驚愕しました。それが原体験です」

 2005年、北浦氏は貸金業を辞めた。その後数年にわたって次に進むべき道を模索した。そして、人間関係を根こそぎ変えるため、カンボジアに行ってボランティアを始めた。