技術力を武器に提案営業活動を長年続けているプロフェッショナル。それが日本IBMの竹田千恵氏だ。“ストレージ愛”にあふれる女性技術者として活躍し、2016年には社長賞を獲得した。

(聞き手は戸川 尚樹=ITpro編集長、編集は小笠原 種高=フリーライター)

SDIテクニカル・セールスとはどのようなお仕事なのですか。

 シニアITスペシャリストというSEの仕事をしています。具体的には、プリセールスの段階で営業担当者と一緒に顧客先を訪問し、技術的な観点からシステムデザインやインフラのあり方などについて提案しています。単に絵を描いて提案するだけでなく、やりたい・やろうとしていることが本当に実現できるかどうか手を動かして検証もします。

撮影:小笠原 種高、以下同じ
撮影:小笠原 種高、以下同じ
[画像のクリックで拡大表示]

 なかでも私の担当しているのが、SDI(ソフトウエア・デファインド・インフラストラクチャ)の一つであるSDS(ソフトウエア・ディファインド・ストレージ)と呼ぶ分野です。顧客企業が大量のデータを効率よく運用管理するためのストレージシステムのあり方を提案したり、その実現手段の一つとして「IBM Cloud Object Storage」という製品の優位性を訴求したりしながら、新しいビジネスモデルを作っていくのが私の役目です。専門職であり、部下はいません。

 以前の部署では、SDSというコンセプトを多くの方々に知っていただくために、講演活動や執筆活動も数多くこなしていました。ストレージの分野を長く担当しているので、私は“ストレージ愛”が強いと思います(笑)。

提案活動のモットーを教えてください。

 お客様にいかに分かりやすく伝えるか、ということです。IBMが手掛けていることを、専門用語ではなく平易な言葉に置き換えて伝えるよう心掛けています。

 ITに関する知識がない方、興味がない方が相手だとしても、きちんと対話するためには、どのように説明したらいいか。このことをいつも考えています。

竹田さんは入社してからずっとSEなのですか。

 はい。入社した当時は、システム構築の現場で開発の仕事をしていました。そこからテクニカルセールスの仕事に移りました。いずれにせよ、SEとして技術職を続けています。

 現在は提案活動が中心ですが、提案書の作成ばかりで技術のことに疎くなってしまっては、仕事になりません。ですから先ほどお話したように、実機を使ってシステムを組んでみて、機能検証や障害テストを実践しています。

日本IBMには新卒で入社したのですよね。

 そうです。大学では理系を専攻していました。そこで、バイオメトリクスや認証など、情報システムの分野を学びました。今のITの仕事に近いことをやっていました。

 就職活動中は様々な会社を受けましたが、同じ研究室の先輩がIBMに入社していて、「女性がすごく働きやすい会社だよ」という話を聞いていました。以前から良いイメージを持ってIBMの入社試験を受けて、今に至ります。