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脱・ザンネン社員

「表面的で中身がない」と冷たい上司、アイデアは「3層展開」で掘り下げる

芦屋広太=システムアナリスト/教育評論家 2017/10/20 ITpro
出典:日経コンピュータ 2017年8月3日号pp.88-91
(記事は執筆時の情報に基づいており、現在では異なる場合があります)
目次一覧

 「良いアイデアを思い付いた」。企画や提案のひらめきを得ることは誰にもあるだろう。問題はそこから。仕事はひらめきだけでは進まない。多くの人を動かすためには、具体策や解決すべき課題までアイデアを掘り下げる必要がある。表面的な発想に中身を詰め込むポイントを紹介しよう。

 「私の考えは十分ではないとは思いますよ。ですが奥寺次長もあんな言い方はないと思うんです。地方ビジネスのてこ入れは簡単ではありません」

 システム企画室の岸井雄介は、いつもの居酒屋で三杯目のビールを飲みながら経営企画室の西部和彦に不満げに言った。

 「確かに地方の人口は減っているけど、だから何もできないのだろうか?俺はそうは思わない。奥寺さんも、何かできることはあると思っているんだろうな」

 「しかし都会への若者の流出は止まらないんですよ。地方のビジネスには打つ手がないと思います」

 「そんな思考停止状態では良い仕事はできないぞ。だから奥寺次長に『表面的で中身がない』って言われるんだ」

*   *   *

 岸井雄介は35歳、関西の地方銀行A銀行のシステム企画室の課長補佐である。西部和彦は37歳。出向していたITコンサルティング会社から最近になって復帰し、現在は課長補佐として経営企画を担当している。

 岸井は現在、預金の流出を食い止めるためのシステム企画を担当している。A銀行の商圏は比較的都市部が多いものの、それでも顧客の4割は郊外や山間などの非都市部に居住している。

 最近の傾向として、非都市部の顧客が死亡して遺産相続が発生すると、相続財産を首都圏に住む子世帯の銀行に移すケースが増えている。結果としてA銀行から流出する預金が増えていく傾向にあり、重大な経営課題となっていた。

 日本の人口減問題は地域の非都市部から地域の都市部へと広がり、次第にA銀行の基盤である関西圏にも及ぶ。問題が深刻になる前に、早急に対策を検討する必要があるとA銀行の経営層は考えていた。

 担当に指名されたのが、情報システム部の奥寺次長とシステム企画室の岸井だった。岸井は全国の地方銀行の状況を調べ、検討の方向性を考えて奥寺次長に説明した。

*   *   *

 「岸井、遺産相続による預金流出問題の対策はどうだ。難しい問題だが、経営課題だからやりがいはあるだろう。他の地銀も同じ問題を抱えているから、参考事例には事欠かないと思うんだけど」

 「次長、この問題は難しいですよ。地方の人口減は避けられませんし、若者は首都圏に行ってしまう。打つ手は限られると思います」

 「そこで思考停止していては先に進まない。意欲もアイデアも出てこないぞ」

 「もちろんそんなつもりはありません。他の地銀のことを調べて、当行での対策案を考えました。要するに相続が発生しても預金を首都圏の銀行に移されないようすればいいわけです」

 「その通りだ。具体的には?」

 「相続財産を引き続き当行に残していただいた場合に、特別金利を付与することを考えています。さらに地域の特産品を毎年贈るサービスはいかがでしょう。ふるさと納税の返礼品にヒントを得ました」

 「優遇金利はありきたりだけど王道だな。特産品は面白いけど、当行の商圏に何か特産品があっただろうか。あったとしても、生産者との交渉やコスト負担が気になるな」

 「そのあたりはこれからです。地域の特産品は首都圏では手に入りにくいので、人気が出る可能性は高いと思いますよ。ふるさと納税制度は返礼品で人気が出たわけですから」

 「ううん、特産品は悪くないけど実現可能性が乏しいんじゃないか。対策を提案するならせめてもう少し掘り下げないと議論は進まないし、会社として意思決定はできないよ」

 「おっしゃることは分かりますが、アイデアの実現はスピード感が大事ではないでしょうか。特産品は武器になる可能性が高いのですから、全行レベルですぐ検討することが顧客流出に歯止めをかける妙案ですよ」

 「岸井、企画やアイデアは思いつきではダメだ。君はスピード感覚をはき違えている。今のアイデアは表面的で中身がない。もっとよく考えてほしい」

*   *   *

 岸井は奥野次長にそう言われたが、まったく納得できなかった。すぐにでも西部に話を聞いてもらいたかった。それが冒頭の件である。

表面的で中身がない提案とは

 読者のみなさんは上司から「君の提案は表面的だ」と言われた経験はないだろうか。上司はどんなときに、部下の話に上っ面をなでているだけと感じるのか。それは問題の解決策や企画の実現手段といった中身を考慮していない状態のことだ。

 何でもいいから詰め込めばいいわけではない。検討に値する濃さがあり、説得力を感じられる水準に達していなければ、やはり表面的との烙印を押されてしまいかねない。

 フィットネスクラブを経営する企業の新規事業企画について考えてみよう。例えば「○○にコミットするプログラムを作る」などと語ったとしても、発想が有名なテレビCMの域を出ておらず、差異化を図るというアイデアの基本的な点について全く掘り下げていない。こういう提案に上司は「上っ面で中身がない」と感じるものだ。

図 提案の内容が表面的である例
解決策にはほど遠い
[画像のクリックで拡大表示]

5W1Hの観点で肉付け

 企画や提案に中身を詰め込むには、内容を掘り下げてより具体的に明示し、第三者が効果や実現可能性を感じられるよう洗練させていく必要がある。もちろんいきなり最深部、すなわち正解にたどり着けるわけではない。地中に埋まった宝を探すかのように、階層を追っていく必要がある。

 筆者のやり方を名付けるなら「3層手段展開」となるだろうか。企画や提案の原案を最上位に置き次の層が具体案、さらに最下層となる個別テーマの具体案、という具合に掘り下げていくやり方だ。もっと掘り下げてもいいが、あまり細かくなりすぎると逆効果だ。筆者の経験上、企画提案の段階では3階層に展開できれば「中身がない」と言われる機会は減る。

 階層を掘り下げる際のポイントは、原案を5W1Hの観点で見直して、表面的だったアイデアに肉付けしていくことだ。フィットネスクラブの新プログラムの例ならば、「誰が=50代の女性」「何を=健康や若さの維持を」「なぜ=比較的裕福で、健康や若さに対する意識がより高まり始める世代だから」などと、考えを展開していく。

 5W1Hといっても必ずしも全ての要素を満たす必要はないし、満たせるとも限らない。この作業の目的は表面的なアイデアをできるだけ具体的にすることにあり、この時点で企画を完成させる必要はない。

 一つの階層を掘り下げたら、個々の単語に着目して個別のテーマへとさらに掘り下げていく。クラブで何をするのか、トレーナーから何を教わるのか、食生活をどうするのか、クラブ以外の生活でどのような運動をするのかなどと総合的に検討する。

ネット検索で補強材料を

 5W1Hに基づく3層手段展開をしようにも、自分の知識だけで考えると結局はレベルが低かったり、そもそも発想できなかったりすることがあるかもしれない。自分以外の知識や情報も活用して発想を補う必要がある。

 発想のヒントは様々だが、時間やコストが限られるときにはネット検索が頼りになる。調査会社が公表している統計やアンケート、話題の新製品の情報などを、5W1Hを考える際の補強材料として使うわけだ。

 ネット検索の結果を鵜呑みにしたり丸ごと複製したりするのは禁物だが、やはり情報の多様さではネットに勝るものはない。情報を補うだけでなく、発想の幅を広げる意味でもネットの力を活用したい。

図 アイデアを深掘りしていく例
観点を設けて深掘りする
[画像のクリックで拡大表示]

*   *   *

 「岸井、奥寺次長が表面的で中身がないと言ったのはこういうことだったんだ。次長は米国の西海岸のベンチャー企業で企画を担当していた経験がある。銀行に戻っても多くの企画を成功させた人だ。だから中身のないアイデアは許さないのさ」

 「スピードを重視するといっても、走りながら具体策を考えるのはやはり危ういということですね。目的を設定したら、5W1Hで発想を3層展開して内容を掘り下げていく…。理屈は分かりましたけど、うまくできるか自信がありません」

 「いきなりうまくいくとは限らないさ。少なくとも自分なりに発想を掘り下げて、その結果をもって提案することが重要なんだ。そうすれば奥寺次長だって、いくらでもアドバイスのしようがある。手段を具体的に展開できれば、仕事の結果もイメージしやすくなる。担当者のアサインや追加で調べるべき事柄、足りないリソースなども見えてくる。つまりプロジェクトマネジメントもやりやすくなるってわけだ」

*   *   *

 岸井は西部課長補佐から説明を受けたことを考え、3週間後に奥寺次長に説明した。

 奥寺次長は「まだ粗いが少しは具体的に考えるようになったな。そういう癖をつけることが中身の濃いアイデアを出す第一歩だよ。この方向で検討を進めよう」と言った。

 岸井は試行錯誤しながらも、特産品を販売する団体の主要メンバーと接触し、協力を取り付けることができた。同団体と共同で実施した預金者向けの特産品の贈呈サービスは、首都圏の相続財産をもつ富裕層の間で評判になったという。

図 岸井氏が説明に使った文書
検討できる水準まで内容を掘り下げた
[画像のクリックで拡大表示]
芦屋 広太(あしや・こうた)氏
教育評論家
SEを経て、現在は企業の情報システム部門でシステム企画・プロジェクト管理を担当。システム開発や問題プロジェクト・組織の改善、システム統合などの経験で培ったヒューマン・スキルを生かしたIT人材教育を行う。雑誌の連載、著書など多数。

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