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脱・ザンネン社員

手段と目的が逆になる残念な社員、オススメは「大義名分チェック」

芦屋広太=システムアナリスト/教育評論家 2017/08/24 ITpro
出典:日経コンピュータ 2017年7月6日号pp.118-121
(記事は執筆時の情報に基づいており、現在では異なる場合があります)
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「ITは手段であり、目的ではない」とは、よく聞く話。あなたの周囲でも、手段がいつのまにか目的になってしまっているケースがないだろうか。目的があってこその手段だが、ビジネスの現場では目的があいまいなまま議論が進むことが珍しくない。大義名分とも言うべき、誰もが納得できる目的を導こう。

 「仮想通貨とブロックチェーンの導入を、西部さんはやめた方がいいっていうんですか?西野常務が導入に向けた検討を指示しているんですよ」

 システム企画室の岸井雄介は、会議室で経営企画室の西部和彦に言い返した。

 「反対というわけじゃない。仮想通貨やブロックチェーンを導入する目的が不明確ではないかと言いたいんだ。新企画担当の財前担当部長はなんて言ってる?」

 「私が企画の中身を説明したら、『手段と目的が逆転してる』って不機嫌でした」

*   *   *

 岸井雄介は35歳、西日本の地方銀行A銀行のシステム企画室の課長補佐である。西部和彦は37歳。出向していたITコンサルティング会社から最近になって復帰し、現在は課長補佐として経営企画を担当している。

 岸井は現在、仮想通貨とブロックチェーン技術を調査している。仮想通貨はITを駆使して新たな金融サービスを創出するFinTechの中核技術であり、世界の資金決済に関する業務にも影響を及ぼすと言われている。

 企画担当役員の西野常務は海外視察で仮想通貨とブロックチェーンの利用事例を知り、銀行にとって有用な仕組みと考えていた。そこで情報システム部に、導入を前提に検討するよう指示した。

 情報システム部で担当になったのが財前担当部長とシステム企画室の岸井だった。岸井は仮想通貨とブロックチェーンに関する情報を集め、財前担当部長に説明した。

*   *   *

 「岸井、仮想通貨とブロックチェーンの件はどうだ。海外の事例や日本のスタートアップ企業の動向は調査できたか?」

 「担当部長、とても興味深いです。世界中で盛り上がってます」

 「ふむ、当行はどのように取り組むべきだろうか」

 「はい。日本でもスタートアップ企業を中心に活動が広がっているので、当行としては彼らとの関係を構築する必要があると思います。例えばスタートアップ企業が発行する独自の仮想通貨を当行自身が購入して用途を検証してみるとか。場合によっては出資することも有用かと。早く出資しないと他の銀行に先を越されます」

 「独自仮想通貨の購入と出資…。それらが必要ならやればいいけど。岸井、そもそも仮想通貨やブロックチェーンを導入する目的は何なの?君の考えを聞かせてくれ」

 「目的は新しいことに他行に先駆けて取り組み、新たな事業を創り出すことではないでしょうか。新しいことには時間がかかりますし、ライバルとの競争もあります。しかも有望なスタートアップ企業や独自仮想通貨は少ない。早く取り組むことがビジネスチャンスにつながると思います」

 「君の話は仮想通貨やブロックチェーンの導入ありきで、それ自体が目的になっているように聞こえるけど」

 「そうです。世の中の流れを見れば、当然の意思決定ではないかと」

 「そうだろうか。岸井は西部の後輩と聞いているが、西部も同じ考えなのか?私は西部と長い付き合いだけど、君のような考え方はしないはずだ」

 「しかしスピード感をもって意思決定しないと、西野常務の要望に応えられないと思います」

 「君は西野常務の考えを間違って捉えている。手段と目的が逆転しているようだ。仮想通貨とブロックチェーンについては、もっと考えてから説明に来なさい」

*   *   *

 岸井は財前担当部長にこう言われ、腹を立てた。一部始終を西部に話し、自分の正当性を確認しようとしたのが冒頭のやり取りである。

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