政府が残業時間に関する上限規制案を提示することを受けて、ITproは「残業時間に関する緊急アンケート」を2017年2月13日から実施した。IT企業やユーザー企業のIT部門の残業の実態を探るのが目的だ。1週間で340人の回答を得た。ご協力いただいた回答者の方には、この場を借りてお礼を申し上げたい。

3割は上限案「月45時間」を超過、“過労死ライン”も6.5%

 今回の政府案は、労働基準法を改正して「月45時間、かつ年360時間」と上限を規定するもの。臨時的な事情に対応するために労使が特別の協定を結ぶ場合でも、「年間720時間(月平均60時間)」を上限にするとしている。これらの上限は、IT企業やIT部門の職場にどの程度影響があるのか。

 今回のアンケートでは、初めに直近3カ月間の月平均残業時間を尋ねた。すると、回答者のおよそ3割が政府案の上限の原則である月45時間を超える残業をしていた(図1)。しかも、特別の協定を結んだ際の上限さえ超過する、月60時間超の「ブラック」環境の人が17.4%に上った。さらに、心身疾患との因果関係が強まる“過労死ライン”とされる「月80時間超」の残業をしている人も6.5%いた。

図1●直近3カ月の月平均残業時間(回答数340)
図1●直近3カ月の月平均残業時間(回答数340)
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 6人に1人が「ブラック」環境という状態は、所属や年齢、役職を問わずほぼ同じ傾向だった。立場を問わず、特定の人や職場に業務が集中していることがうかがえる。

長時間残業者の過半数は「いつも忙しい」

 もっとも、IT企業の職場は一般に、時期によって繁閑の波がある。確かに開発の職場であれば、プロジェクト終盤は納期を守るために長時間の残業を受け入れるケースがある。直近3カ月が忙しかった回答者が多かった可能性がないかどうか考慮すべきだろう。

 そこで直近3カ月の残業時間が以前と比較して増えたのか、それとも減ったのかを尋ねた。すると、回答者全体と月60時間超の残業をする回答者で、鮮明な違いが表れた。