NTTドコモは2017年2月26日、米AT&Tやドイツテレコムなど世界の通信事業者、ベンダー22社と共同で第5世代移動通信システム(5G)の早期仕様策定に向けた共同提案に合意したと発表した。早ければ2019年の大規模トライアルや商用展開ができるように仕様策定を急ぐ。かねてから2020年の5G商用化をアナウンスしているNTTドコモは、5G商用化の前倒しの可能性はあるのか。スペイン・バルセロナで開催中の「Mobile World Congress 2017」の会場内でNTTドコモの吉澤和弘社長に聞いた。

写真1●本誌の単独インタビューに応じたNTTドコモの吉澤和弘社長
写真1●本誌の単独インタビューに応じたNTTドコモの吉澤和弘社長
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共同提案で、3GPPなどでの5G仕様策定も前倒しが進みそうだ。ドコモとして5Gの2019年度商用化など前倒しの可能性は。

 海外の通信事業者は5Gの商用化を早める動きがある。NTTドコモとしては基本的に5Gの商用サービスそのものは2020年からと考えている。現時点で前倒しするつもりはない。5Gのネットワークを整備するには時間がかかる。このような作業は2019年度一杯かかるだろう。とはいえ5月以降に開始する5Gトライアルサイトのような、ユーザーに5Gを体感してもらえる環境の整備はどんどん進める。

昨年の「DOCOMO R&D Open House 2016」では5Gの新たなサービス創出に向けて、綜合警備保障(ALSOK)やディー・エヌ・エー(DeNA)など幅広い業界との協業を発表した。それぞれ面白いユースケースになりそうだが、まだ5Gのビジネスモデルが見えていない。

 現在の延長上のビジネスモデルもあれば、IoTのユースケースでは5年分の料金を一括徴収したり、都度課金が適している場合もある。B2B2C型でエンドユーザーではなく、企業からお金をいただく形もあるだろう。ユースケースごとにビジネスモデルは異なる。今からマネタイズの手段を考えていくことになる。

NTT持ち株会社の鵜浦博夫社長は、本誌インタビューなどで5Gの設備共用の必要性を訴えている。

 5Gの設備共用について、携帯電話事業者間の競争の関係上、NTTドコモが取りまとめることは難しい。スモールセル基地局のバックホールの光回線部分は共用できる可能性があるかもしれない。取り付け工事などを共用する道も考えられる。