2007年に登場したiPhoneは、今年で10周年を迎える。この10年の間、iPhoneは携帯電話業界に多大な影響を与えた。アップルも参考にしたと言われるiモードの生みの親の一人であり、携帯電話業界の最前線でiPhoneを見てきたACCESS(アクセス)共同創業者、TomyK 代表取締役の鎌田富久氏に話を聞いた。前編の今回は、主にこの10年を振り返り、後編では次の10年を論じる。

(聞き手は佐藤 雅哉、高橋 健太郎=日経コンピュータ


撮影:陶山勉
撮影:陶山勉
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この10年振り返って、iPhoneが社会を変えたのかどうか、どのようにお考えでしょうか。

 相当大きく変えましたよね。iPhoneの登場前は、パソコンが小型化していく一連の流れがありました。ハンドヘルドPCと言われていたものですね。できるだけ小型化して、米国人のポケットに入るサイズです。

 一方、アクセス含め日本勢が目指していたのは、携帯電話が進化していく流れです。日本はiモードなどで携帯電話が世界で最も進化していました。

PCと携帯電話の交差点に登場したブレークスルー

 この時期は、ちょうどPCと携帯電話の流れが交わった接点だと思うんです。パソコンが持ち運べるよう小さくなる方向と、通信機能主体だった携帯電話が多機能になって画面が大きくなるという方向です。

 両側から近づいていったところで、パソコン側のネックはやっぱりキーボードのサイズです。フルキーボードを搭載したBlackBerryはものすごく流行っていましたけど、あそこまで小さくなってしまったわけですよ。

 携帯のほうも画面がだんだん大きくなって、折り畳み式で画面を大きくしつつ、でもボタンは付いていたという状況でした。

 そこに出てきた解が、iPhoneの全面タッチパネルでした。パソコン側からするとキーボードをなくし、携帯側からするとボタンをなくす。ちょうど両側から来た交差点で、いい解を出してきたわけですね。

 そこが僕はブレークスルーだったかなと見ています。すごく使い勝手がいいし、汎用的なアプリケーションプラットフォームになった。パソコン側から言えば手のひらサイズのコンピュータができた。携帯側からすると、汎用的なデバイスとなり、結果的にスマートフォンと呼ばれるようになりました。ちょうどその交差点でブレークスルーとなるヒット商品が出たというところです。

 それを最初にやられた悔しさはあります。ただ、みんなが狙って少しずつ近づいてきていたところなんですね。いずれ誰かがやったとは思うんですけど、スティーブ・ジョブズが最初にやったということで、iPhoneが10年間続くほどのプラットフォームになったのだと思います。