最新のiPhone 7全体を司るのは「A10」というプロセッサである。これはアップル自身が設計したトップクラスのSoC。アップルはトップクラスの機器メーカーであると同時に、トップクラスの半導体メーカーでもあるのだ。第2回は、iPhoneのプロセッサに焦点を当て、アップルが今やどのような存在なのかを明らかにする。

iPhoneはまさに半導体の百科事典

 まずは、iPhone 7がどのような半導体チップで構成されているのか見てみよう。図1はiPhone 7内部の半導体チップの接続図である。センターにA10プロセッサが置かれ、iPhoneを集中制御している。A10を取り囲むように、センサー群や通信用チップ、パワーアンプ、さらにギガバイト級の巨大メモリーが備わっている。

図1●iPhone 7の内部チップ構成図
図1●iPhone 7の内部チップ構成図
出所:テカナリエ
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 左側には、米国のクアルコム、ブロードコムなどの通信チップ群が並んでいる。ベースバンドプロセッサ(モデムチップ)やRFトランシーバーと呼ばれる通信用チップが送信データを作り出す。それらを増幅して電波として外部に出すためのパワーアンプなどがその先に配置されている(この図では省略している)。そこには村田製作所やアルプス電気などの日本メーカーのチップも多く使われる。

 図1の右側は、センサーや近接通信チップが並ぶ。スマートフォンはセンサーの塊である。カメラのCMOSセンサーは画像を写し出す。さらに方向、速度、角度、距離などの情報を各センサーが捉え、多くのアプリケーションで利用する。まさに半導体の百科事典のようなものが現在のスマートフォンの姿である。

 全てのデータはA10に集められ、各種アプリケーションを動かしている。A10には、ひと昔前のPC以上の能力が収まっているが、PCとの大きな違いがある。電池だけで駆動できる低消費電力設計が成されている点だ。

 低消費電力のためA10プロセッサには「電源IC」と呼ばれる電源を制御する機構が備わっている。動画再生のような重い処理を行う場合には電力をたくさん使うが、文字だけのメールの場合は電力が少なくて済む。小さな処理の場合には、少しでも電力消費を抑えるように、使っていない機能の電力を止めたり(電源遮断)、遅い処理でもよい場合には周波数や電圧を落としたり、様々な工夫がなされている。電源ICとプロセッサの間では、常時少しでも消費電力を減らす仕組みが施されているわけだ。