2007年のiPhone誕生から2017年で10年が経つ。筆者は、初代iPhoneから最新のiPhone 7まで、そのハードウエアをつぶさに観察してきた。iPhone、そしてそれを作ったアップルとはどのような存在なのか、どう世界を変えてきたのか、ハードウエアの専門家の立場から解説していきたい。

 第1回の今回は、iPhoneの機能の進化に焦点を当てる。第2回はプロセッサを中心に半導体メーカーとしてのアップルについて、第3回はiPhoneの内部構造について論じる。

携帯電話業界の主要プレーヤーが全て入れ替わった

 iPhoneとは何だったのか。10年経った今振り返ってみると、老舗メーカーを中心とした秩序を徹底的に破壊して、スマートフォンという新秩序を作り上げた起点という結論になる(図1)。

図1●iPhoneは何を破壊し、何を生み出したか
図1●iPhoneは何を破壊し、何を生み出したか
出所:テカナリエ
[画像のクリックで拡大表示]

 iPhone以前は携帯電話という大きなマーケットがあり、メインプレーヤーはノキア、モトローラなどの海外メーカーに加え、日本国内にも多数の携帯電話端末メーカーがひしめいていた。2007年の初代iPhoneは2G通信機能しかもっておらず、主に北米だけで売られた。ターゲットとした相手は当時ネットワーク端末としても人気のあったブラックベリーであった。初代iPhoneは話題にはなったものの680万台しか売れず、大ヒットには至らなかった。

 しかし翌2008年のiPhone 3Gでは3G通信機能を備え、一気に世界モデルとして各国に広がっていった。ほぼ同時機にAndroid OSの1号機、T-Mobile G1(HTC Dream)がリリースされ、スマートフォン時代の本格的な幕開けとなった。

 iPhoneは瞬く間に世界に広まった。当時中国や香港では続々とスマートフォンもどきが誕生した。中身は携帯電話のままで外観のみiPhoneそっくりの製品が売られる一方、独創的なスマートフォンも登場した。スマートフォンは2010年には世界中でブームとなった。日本の携帯電話機メーカーの再編、ノキア、モトローラといった老舗の衰退や再編が始まった。

 いわゆる3C分析の通用しない時代に突入したわけだ。今までトップを争っていたノキアとモトローラではない、新しい面々がスマートフォンを開花させた。プレーヤーががらりと入れ替わり、新しいプレーヤーがスマートフォン時代の主役となった。

 その時点でアップルを直接ライバル視したのはサムスン電子であった。サムスンはアップルと半導体ではパートナー、スマートフォンではコンペティターという構造のまま、新市場に突入した。

スマートフォンの基本条件を満たしていた初代iPhone

 iPhoneの初代機を今見ても、スマートフォンとしてのハードウエアの条件は満たしている。乱雑なボタンやスイッチが全て排除され正面にはホームボタンのみ、タッチパネルでの操作、3.5mmのイヤホン端子、カメラやセンサーの搭載。現在の最先端スマートフォンと比べて、基本は同じものである。

 図2は初代iPhone と2016年のiPhone 7の基板の様子である。スマートフォンとしての基本構造は同じままだが、内部は大きく変わった。初代のiPhoneは薄型化を追及しておらず、基板と電池を重ねる構造であった。

図2●初代iPhoneと最新iPhone 7の基板の違い
図2●初代iPhoneと最新iPhone 7の基板の違い
出所:テカナリエ
[画像のクリックで拡大表示]

 当時のスマートフォンは基本構造や機能こそ現在の機器と変わっていないものの、厚みがあり、基板と電池を重ねるものが多かった。厚みは持ちやすさにつながっており、その点では携帯電話を持つような感覚を重視したのかもしれない。

 L字型の基板に変じたのはiPhone 4からである。以降は電池をL字基板の脇に置くことで、薄さを実現した。

 その後、iPhoneは年次進化を続けた。しかしその進化はiPhoneに限ったわけではなく、サムスンのGalaxyも、LG電子のGシリーズも、中国メーカーのスマートフォンも同様に、ほぼ同期して進化していく。