今年、初代iPhone(日本未発売)の発売から10年を迎える。タッチパネルで快適に操作できるiPhoneの登場によって、携帯電話の世界は劇的に変化した。だが、最初から日本でiPhoneが受け入れられたわけではなかった。なぜ日本でiPhoneがこれだけ人気になったのだろうか。

「iPhone 3G」はPCがないと使えなかった

 現在当たり前のように使われているスマートフォンだが、その先駆けとなったのがiPhoneである。スマートフォンという概念自体はiPhone以前にも存在していたが、それらはどちらかといえばQWERTYキーボードやペンで操作するなど、PCを小さくしたようなものという印象が強かった。指とタッチパネルによる操作という画期的なインターフェースを備え、現在のスマートフォンのスタイルを生み出したのが、iPhoneであることは確かだろう。

 日本では未発売だが、初代iPhoneが2007年に発売されてから今年で10年を迎えることとなった。日本でも2008年に「iPhone 3G」が発売され、アップルストアや家電量販店に1000人規模の行列ができる大フィーバーとなり、筆者も発売当日はiPhoneを入手するため、早朝から数時間、行列に並んでいたことを思い出す。

日本で初めて発売されたiPhoneとなる「iPhone 3G」。筆者も早朝から行列に並んで購入した(筆者撮影)
日本で初めて発売されたiPhoneとなる「iPhone 3G」。筆者も早朝から行列に並んで購入した(筆者撮影)
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 しかしながらiPhoneは、実は日本ではすんなりと受け入れられたわけではなかった。その理由の1つは「iモード」にある。日本では1999年にiモードが登場して以降、携帯電話でメールを交わしたり、Webサイトにアクセスしたりする使い方が広く定着。他の国ではモバイルでのインターネット利用がなかなか進まなかったため、iPhoneの登場がiモードの登場と同じくらいのインパクトをもたらした。ところが、日本では先にiモードが存在したため、必ずしもそのインパクトが大きかったわけではなかったのだ。

 そしてもう1つは、画期的なインターフェースと評価される一方で、実際に使ってみると必ずしもユーザーフレンドリーとは言えなかったことだ。iPhone 3Gの発売当初、テキストのコピー・ペーストができないことは非常に多くの人から指摘がなされていたが、筆者がより致命的だと感じていた問題が「アクティベートにPCが必要」という点だ。

 携帯電話はITの最新機能が詰まったデバイスである一方、ITに詳しくない人も利用するデバイスでもある。それゆえ、PCを持っていなければ使い始められないというiPhoneの仕様は、特にPCの利用が諸外国と比べ高くない日本では、携帯電話として“あり得ない”と筆者は強く感じたことを覚えている。