通信大手3社の2016年4~12月期連結決算について、専門記者が激論を交わす。今回はセット割や非通信領域のビジネス状況について言及する。

(進行ならびに構成は加藤 雅浩=日経コミュニケーション編集長)


大手3社による光回線市場を巡る競争はどう見る。

記者B NTTドコモとソフトバンクは、NTT東西の光回線の卸提供モデル「光コラボレーションモデル」を使って、それぞれ44万件前後の純増数を獲得しています。それも他社からの乗り換え(転用)に限らず、新規契約が多いそうです。若者を中心にモバイル回線で十分とするユーザーも少なくないですし、需要の頭打ちが懸念されていましたが、まだ残っていたということですね。

 かたやKDDIは光回線の純増数が3万1000件と物足りない。NTTドコモとソフトバンクの光回線は2年足らずで契約数が300万件を突破していて、このペースで拡大が続けばKDDIは2017年度にも抜かれそうです。

記者A KDDIは携帯電話とのセット割「auスマートバリュー」で他社の固定通信も対象としたゆえに、単独で攻勢をかけにくい状況に陥っています。auスマートバリューもかつての勢いが落ちた。携帯電話と光回線のセット割は防衛策として重要ですが、もはやそれだけでは顧客を囲い込めなくなっています。

 結局は競合他社のセット割でひっくり返されるだけ。光回線の需要がいつまでも長続きするとは考えにくくて、テコ入れが喫緊の課題となっています。こうした背景を踏まえると、ビッグローブの買収もうなずけますね。

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進まぬマルチデバイスは嫌な兆候?

このほかで気になった点はあるかな。

記者B モバイル通信料収入の、四半期ごとの推移に着目しています。

 前四半期に比べて増加したのはKDDIだけ。NTTドコモは季節要因(長期休暇の有無でトラフィックが変動)に加えて、大容量プラン「ウルトラパック」のマイナス影響が想定より多めに出ました。一方、KDDIは大容量プラン「スーパーデジラ」によるマイナス影響を、小容量からのアップセル(プラス影響)でうまくカバーできているようです。

 来期は大手3社とも大容量プランをどれだけ拡販できるかが勝負となるでしょう。