通信大手3社の2016年4~12月期連結決算が出そろった。増益幅は大手3社とも15%超と好調。主力の携帯電話事業で通信料収入が拡大し、総務省による端末販売適正化で販売手数料の削減も進んでいる。
一方、「格安スマホ」に代表されるMVNO(仮想移動体通信事業者)の拡大に伴い、不安な兆候も顕在化してきた。通信業界を専門とする日経コミュニケーションの専門記者が、携帯電話大手3社の決算と、その行く末を分析する。
KDDIのMVNO契約数(35万7000件)はかなり少ない印象だ。
記者A ジュピターテレコム(J:COM)が、MVNOサービスの契約数が2017年1月末に10万件を突破したことを踏まえると、UQコミュニケーションズのUQ mobileの契約数は30万件弱が濃厚です。UQコミュニケーションズは広告宣伝を大々的に展開して攻勢に出ていますが、まだこれからと言えそうですね。
記者C UQコミュニケーションズは2016年7月に米アップルの「iPhone 5s」の取り扱いを始めて、過去最高の販売数を達成しました。聞くところでは、月1万5000台だったそうです。年間で150万件の獲得を目指していると聞いていたので、桁の間違いではないかと思ったほどです。
記者B 2017年1月に開催した説明会では、「UQ mobileの新規契約数が2016年10月以降、急速に伸びている」と言っていたのになあ。「MVNOの新規市場の30%獲得が見えてきた」と自信たっぷりだったけど、年間で300万件とされるMVNO新規市場の30%というと90万件程度。今年度の計画を後ろ倒しにしただけじゃないか、という皮肉の声も聞こえますね。
問題は格安スマホより3社間での流動性低下
格安スマホが伸びているとはいえ、大手3社の解約率はそろって低下している。
記者C 大手3社は詳細を公表していないので推測でしかありませんが、現状では格安スマホが伸びていると言っても、たかが知れているということではないでしょうか。
調査会社のMM総研によると、独自サービス型SIM(いわゆる格安SIM)の年間純増数は2015年度が約213万件、2016年度予想が約281万件です。大手3社の全体契約数(2016年12月末で1億6071万件)に比べると、規模がまだ小さく、2台持ちで追加契約するなら解約率には影響しません。
かたや総務省の指導で従来のようなキャッシュバック競争はなくなり、大手3社間の流動性が一気に低下しています。解約率の低下はこちらの影響のほうが大きいと見ています。