「NB-IoTはIoTにとってポジティブな存在か?」ーー。2月27日から3月2日にかけてスペイン・バルセロナで開催された「Mobile World Congress 2017」(MWC2017)の会場内には、このような質問に対して来場者が4段階のボタンで感想をフィードバックできるスタンドがあちこちに設置されていた(写真1)。

写真1●MWC2017の会場内に設置された来場者へのアンケートボタン
写真1●MWC2017の会場内に設置された来場者へのアンケートボタン
実はNB-IoTの商用ネットワークで動作している。
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 実はこのボタン、LTE版のLPWA(Low Power Wide Area)通信技術である「NB-IoT」を使って来場者の観測を収集している。英ボーダフォンは2017年1月、バルセロナやマドリッドなどスペインの4都市でNB-IoTの商用展開を開始。このボタンは、ボーダフォンの商用NB-IoTネットワークを通じて、ほぼリアルタイムで来場者の反応を集計している(写真2)。

写真2●来場者の反応はNB-IoTネットワークを経由してほぼリアルタイムで集計している
写真2●来場者の反応はNB-IoTネットワークを経由してほぼリアルタイムで集計している
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 NB-IoTは、SIGFOXやLoRaWANといった免許不要帯を用いるLPWA技術の台頭に危機意識を持った携帯電話事業者が、「5Gを待っていたら遅い」と異例のスピードで2016年6月に、3GPP Release 13として標準化した技術である。MWC2017の会場内では、そんなNB-IoTのデモが続々と登場。いよいよ大きく花開こうとしている様子がうかがえた。

 例えばボーダフォンのブースでは、バルセロナ市内のゴミ収集ボックスにセンサーを設置し、NB-IoTで情報を収集。ゴミ収集をスマート化する取り組みや(写真3)、スーツケースにNB-IoTのモジュールを搭載し、紛失防止を実現するようなデモを見ることができた(写真4)。

写真3●ゴミ収集ボックスにセンサーを設置(左)、ゴミ収集をスマート化するデモ(右)
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写真3●ゴミ収集ボックスにセンサーを設置(左)、ゴミ収集をスマート化するデモ(右)
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写真3●ゴミ収集ボックスにセンサーを設置(左)、ゴミ収集をスマート化するデモ(右)
写真4●スーツケースにNB-IoTモジュールを搭載し、紛失防止するユースケース
写真4●スーツケースにNB-IoTモジュールを搭載し、紛失防止するユースケース
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 地元スペインの通信事業者テレフォニカもMWC2017に合わせて、NB-IoTのライブネットワークを用意。スウェーデン・エリクソンと共同で、ビル管理のスマート化など様々なデモを見せていた(写真5)。

写真5●スペイン・テレフォニカもNB-IoTのライブネットワークを用意(左)。スウェーデン・エリクソンと共同でビル管理のスマート化などをデモ(右)
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写真5●スペイン・テレフォニカもNB-IoTのライブネットワークを用意(左)。スウェーデン・エリクソンと共同でビル管理のスマート化などをデモ(右)
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写真5●スペイン・テレフォニカもNB-IoTのライブネットワークを用意(左)。スウェーデン・エリクソンと共同でビル管理のスマート化などをデモ(右)

1年でエコシステムが急拡大、商用サービスも続々開始

写真6●MWC2017の会期前日に開催された「GSMA Global Mobile IoT Summit」の様子
写真6●MWC2017の会期前日に開催された「GSMA Global Mobile IoT Summit」の様子
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 「NB-IoTは1年前の段階では、将来性は不確実であり標準化も未完了。エコシステムも不完全だった。それが12カ月でまるで変わった。標準化も完了しエコシステムは拡大。商用サービスもスタートした」ーー。MWC2017の会期前日に当たる2月26日、MWCを主催する携帯電話の業界団体「GSMA」のイベント「GSMA Global Mobile IoT Summit」(写真6)に登壇したNB-IoT Forumのルーク・イビットソン議長は、このように強調した。