サイバーセキュリティ先進国といわれるイスラエルで、その強さの源泉の一つは、次から次へとスタートアップ企業が生まれることだ。

 イスラエルには、サイバーセキュリティ関連のスタートアップ企業が約500社あるといわれる。国防軍との技術的な連携が盛んな同国のスタートアップ企業では、軍の技術を使った製品やサービスが少なくない。軍を退役した企業家が、軍時代に携わっていた技術を使って会社を興すケースも多いという。

 イスラエルのテルアビブで1月30日~2月1日に開催されたセキュリティイベント「CyberTech 2017」。その展示会場では、チェック・ポイント・ソフトウェア・テクノロジーズやシスコシステムズ、IBMといった大手ベンダー各社をはじめとした主要な展示エリアのほかに、机一つという小さいブースがずらりと並ぶスタートアップ企業の展示エリアが設けてあった。多数のセキュリティスタートアップ企業を擁するイスラエルならではといえる。

CyberTech 2017のスタートアップ企業展示エリア
CyberTech 2017のスタートアップ企業展示エリア
1社当たり一つの机という小さいブースがずらりと並ぶ。
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 スタートアップ企業各社は、自社の技術や製品、サービスをイベントの参加者にアピール。特許出願中だという独自の技術を熱心にプレゼンする企業も多かった。

Cyber 2.0の展示ブース
Cyber 2.0の展示ブース
サイバー攻撃を検出、防御する製品を展示していた。
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AIや機械学習、制御ネットワーク向けが活況

 今回のCyberTechでは、スタートアップ企業の展示で多かったのは、AI(人工知能)や機械学習を利用したサイバーセキュリティ製品・サービスだ。サイバー攻撃の検知に機械学習を利用することで検知精度を上げたり、未知の攻撃を検知したりする。

 例えば、セレラが提供するCelare T-Senseは、様々なログ情報を収集して機械学習し、ネットワークの異常やサイバー攻撃を検出する。アンボッティファイが提供するUnbotifyは、マウスイベントやキーストロークなどを機械学習することで、Web上の不正なボットを検出するサービスである。

 また、展示会場で今回数多く見かけたキーワードの一つが「SCADA Security」だ。SCADAはSupervisory Control And Data Acquisitionの略で、産業系の制御システムを指す。IoT(Internet of Things)に注目が集まる中で、ITネットワークだけでなく、IoTなどに利用する制御系のネットワークのセキュリティのための製品・サービスを打ち出すスタートアップが目立つ。

 例えばスカダフェンスが提供するContinuous Network Monitorはその典型。製造業の制御系ネットワークの異常検知機能を備える。スカダスードゥーが提供するZEUSは、電気や水道といった社会インフラ向けのセキュリティ製品である。

 モバイル機器向けには、認証機能を提供するスタートアップ企業が多かった。ベリヒューが提供するVerihyooはその一つ。スマートフォン上での手書き動作を基に生体認証する製品をデモしていた。

Verifyooの展示ブース
Verifyooの展示ブース
手書きの動作などで生体認証するモバイル機器向けの認証製品をデモしていた。
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