インターネットは今や生活のインフラとなっている。直接的であれ間接的であれ、日本に暮らしていてインターネットに全く無縁の人はほとんどいないだろう。黎明期から数えると数十年経つインターネットだが、いまだに奇異な事実が存在し続けている。

 インターネットの広告やEC(電子商取引)の分野では、ページビューやユニークユーザー数などの指標に対して成約した割合のことを「コンバージョン率」と呼ぶ。例えば、あるECサイトに訪れた人が100人いて20人が購入した場合、コンバージョン率は20%になる。

 だが、インターネットの世界で「Webサイトのコンバージョン率=1%」が常識とされていることをご存知だろうか。世界中のWebサイト数が18億を突破したとも報じられる中、一口に「Webサイト」の常識を語るのは少々乱暴ではあるが、資料請求数や販売数といった具体的な成約の指標を持っているWebサイトにおいて業界通念となっている。

 もちろん、業種や流入経路によって1~10%程度の幅はあるものの、運営側とユーザーが最低限の目的を共有している接点において、90%近くコンバージョンしない事態が“常識”として見過ごされているこの状況は異様とも言える。この常識を変えたいという思いで我々は2013年にUNCOVER TRUTHを創業した。

 この3年間で私たちが分析・改善してきた企業Webサイトは300を超える。Webページ上で取得した各種データの組み合わせによる分析・改善施策の提案・実行で、コンバージョン率やページ遷移率を上げるのが我々の役割だ。

 面白い事例があった。訪問営業を顧客獲得の中心手段とする企業のWebサイトで、クリックが集中しているコンテンツを調べると【よくある質問】にある【対面ではなく、電話やインターネットで契約を完結させられないか?】という項目に行き着いたのだ。

 ユーザー行動データが明らかにしたのは、本来、事業の中心に据えているやり方が、実は顧客の一番の悩みの種になっていたという事実。インターネットが生活のインフラになった今「コンバージョン率=1%」を常識とする世界は、コンバージョンの手前にある生活者の心理が取りこぼされてしまっていることを意味しているのではないだろうか。このように、分析の過程で軸となる「Webサイト内でユーザーがどのような行動をしているか」というデータは、実に多くのことを教えてくれる。

 私たちは進化し続けるこの業界にいるからこそ、Webサイトが10年後も今の形態のままであり続ける保証はないと思っている。一方、こうした「生活者の心理=求められているコンテンツ」のデータは普遍的に有用で、その蓄積は世の中に価値を提供し続ける材料になるだろうと信じている。

 私たちのビジョンは、インターネットの世界をより良くしたいというシンプルなものだ。Webサイト上にあふれるユーザーの心理を拾い、そこから見えてくる真実を明らかにし、使いやすいWebサイトによってインターネットを真のインフラにしていきたい。「コンバージョン率=1%」という現状は、こうした状況にはまだほど遠いと言える。

※ このコラムは、識者の談話を基に構成した記事です。