マイナンバー制度に絡むシステムの問題は、依然として残っている。行政事務の効率化の要となる情報連携は、当初予定より半年以上遅れる見通しだ。根本原因は、制度全体に関するガバナンスの欠如にある。

 システムトラブルにより滞っていたマイナンバーカードの交付は、改善の兆しが見えている。総務省によれば2016年5月までに受け付けた申請に対し、市区町村の9割強が8月までに交付通知書を発送できる見込みだ。

 交付通知書をマイナンバーの通知カードや本人確認書類とともに自治体の窓口に持参すれば、マイナンバーカードを受け取れる。総務省は「カード申請から交付通知書の発送までの期間を1カ月以内にする」としている。

 しかし、これでマイナンバー制度に関わるシステムの問題を全て解決できたわけではない。自治体セキュリティの整備は遅れ気味である。さらに無視できないのは、マイナンバーを利用して税や社会保障との間で情報を連携する「情報連携」を支えるシステム構築の遅れだ。

稼働が半年以上遅れる見込み

 国や地方自治体は情報連携により、不正な税逃れや社会保障の不正受給を無くして、税収増につなげられる。結果的に、所得などに応じて必要な人に十分な社会保障サービスを効率よく提供できるようになる──。これが事前に期待された情報連携の成果だ。マイナンバー制度による国の情報連携は当初、2017年1月に開始する計画だった。ところが本誌の取材で、予定より開始が半年以上遅れる見通しであると判明した。

 マイナンバー制度では、符号を行政機関ごとに振り出し、照会があればその符号を利用して個人情報をやり取りする(図3)。情報連携により、様々な個人情報が漏洩しないようにするのが狙いだ。

図3 マイナンバーカードと情報連携
図3 マイナンバーカードと情報連携
システムの問題は収束しない
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 この仕組みを実現するために、各機関の既存システムに加えて、中間サーバーを用意する。マイナンバーそのものは既存システムに収容しておき、中間サーバーでは個人情報と符号をひも付けて扱う。

 情報連携を実現するには、既存システムの改修とともに、中間サーバーを構築しなければならない。国の情報連携は年金に関わるものが中心なので、年金分野の中間サーバーが必要になる。

 ところが厚生労働省は7月時点で、年金分野の中間サーバーを含むシステム構築に関する入札公示をしていない。入札の前段階としてベンダーに打診するための「資料提供招請に関する公示」を6月に公表しただけだ。

 マイナンバー制度では、国の情報連携を行政事務効率化のための重要なマイルストーンと位置づけている。年金分野の中間サーバーを構築しないと、国の情報連携は前進しない。