マイナンバーに関するシステムトラブルは、カード管理システムの中継サーバーにとどまらない。人口約373万人で国内最大の市町村である横浜市では2016年2月1日に、市内全域でカードを交付できなくなる事態が発生した。多くの統合端末から地方公共団体情報システム機構(J-LIS)のシステムへ同時接続しようとすると、エラーが生じた。「人口が多い大都市に特有のトラブル」(J-LISの上遠野博之 個人番号センター個人番号カード部長)という。

 J-LISは同時接続数の上限を30台から42台に増やし、それでも接続できないエラーが出た場合は「再送信」できるボタンを表示するよう、市町村向けプログラムを改良。横浜市と京都市に先行適用した。

 この障害は、同時接続数が上限に達すると起こる。J-LISは「一部で事前に市町村向けプログラムを配ってリハーサルを実施したが、混み合う状況までは再現できず、顕在化しなかった」(上遠野部長)と説明する。

 一連のシステムトラブルにより、市町村でのマイナンバーカード交付は遅れている。5月29日時点で、申請を受けた約1040万枚のうち、交付できたのは約465万枚にとどまる。

停電でカードを交付できない

 宮城県では遅れを取り戻そうとした対策が裏目に出た。5月28~29日の土日に、県内の仙台市や石巻市など9市町で統合端末が動作せず、268枚のカードを交付できないトラブルが発生した。システム障害による遅れを取り戻すために28日から始めた休日交付で、いきなりトラブルに見舞われた。

 原因は、当日に県が電気設備点検のために実施した停電である。J-LISと市町村を結ぶルーターが県庁内にあり、この停止が原因だった。宮城県総務部市町村課行政第一班の松本裕紀主幹は、「停電は毎年のことで把握はしていた。市町村の業務には関係ないとの油断があり、こうした事態を招いて申し訳ない」とする。

 一方で松本主幹は、「市町村のカード交付業務に、県庁の機器が関係しているとは思わなかった」と打ち明ける。システム障害が頻発した3月まで、宮城県の市町村課はJ-LISと頻繁にやり取りしていたが、「県管理機器に関する注意喚起は特になかった」(同)という。

 今回のトラブルでは、J-LISに問い合わせても「土日なのでシステムの担当者は不在だった」(松本主幹)。県設備の停電が原因と特定できたのは月曜日になってからだ。

 問題のルーターが県庁内に設置されていたのは、住基ネットを「市町村」「都道府県」の2層構造で構築した時代の名残である。都道府県サーバーは現在、J-LISが集約・管理しているが、宮城県のように一部機器を県庁舎に置く県が残っているという。J-LISは管轄外の機器を対象に注意喚起するのは難しいとしつつ、「こうした事案が再発しないよう、改めて周知していく」(情報化支援戦略部)とする。