マイナンバーカード管理システムの障害は、制度の出鼻をくじいた。全国の自治体の端末を操作できなくなるトラブルが断続的に発生。来庁者にカードを交付できず、自治体がカード交付通知を手控えるなどの事態となった。自治体で情報連携が始まる2017年7月までにセキュリティ強化が間に合うかも大きな問題だ。
「実績があるシステムに対する過信があり、過去との違いに対する意識が欠けていた」。地方公共団体情報システム機構(J-LIS)の上遠野博之 個人番号センター個人番号カード部長はこう悔やむ。上遠野部長は、マイナンバーカード(個人番号カード)の交付処理を管理する「カード管理システム」の構築・運用プロジェクトを担当した。
稼働直後までは順調だった
2016年1月から3月にかけて、カード管理システムでトラブルが相次ぎ、市町村の窓口における交付業務が混乱した(図1)。
「本稼働するまでは、プロジェクトは順調だった」と上遠野部長は話す。1日当たり11万5000枚の発行を想定し、負荷テストを実施。マイナンバーカードの申請は2015年10月に始まり、本稼働の2016年1月までに1日当たり10万枚程度のペースで蓄積したが、想定の範囲内だったという。
2016年1月の稼働当初は順調だった。最初の障害が発生したのは1月13日。システムを利用する一部の市町村から「交付用の統合端末が使えない」との連絡を受けた。原因は不明だったが、マイナンバーカード管理システムの通信をつかさどる「中継サーバー」を再起動して、一旦はシステムが正常化した。
しかし、1月18日に中継サーバーの障害が再発、市町村の端末が使えない事態になった。応急措置として2台だった中継サーバーを4台に増設したが、状況は好転しない。その後、中継サーバーの障害は3月19日までの約2カ月間で計53回発生した。
3月半ばごろは市町村で住民の転出・転入手続きが増える時期で、住民基本台帳ネットワークシステム(住基ネット)に負荷がかかる。住基ネットとカード管理システムは端末やサーバー機器などを共用しており、どちらもJ-LISが運用している。
住基ネットの負荷増加の影響を受け、3月半ば以降、カード管理システムの処理遅延が常態化した。J-LISが抜本的な対策を実施し、正常化を宣言したのは4月27日である。
マイナンバーカード管理システムのトラブルはなぜ起こったのか。J-LISへの取材と報告書から原因を探る。