人材不足の状況が慢性化しているIT業界。ITエンジニアの年収やキャリア志向、やりがい、ストレス状況にその影響が表れている。年齢層によっても考え方は大きく異なる。ITエンジニア1万人を対象に実施した調査から実態を探った。

 全体の平均年収は微増だが、職種・スキル間の格差は拡大傾向にあり、50歳以上の独立志向が急増している─。IT人材のスキルキャリアを研究するNPO法人「ITスキル研究フォーラム(iSRF)」が国内で就業するITエンジニア1万228人を対象に実施した調査結果から、こうした傾向が浮かび上がる。

 調査では、経済産業省が作成した「ITスキル標準(ITSS)」に基づいて、IT人材の職種やスキルレベルを分類した。職種はITSSにある11職種に、SaaS(ソフトウエア・アズ・ア・サービス)やPaaS(プラットフォーム・アズ・ア・サービス)、IaaS(インフラストラクチャー・アズ・ア・サービス)といったクラウドの導入を担う立場の「クラウド」と「品質保証」を独自に加えた。

 スキルレベルは「未経験レベル」とレベル1~7で、レベル7に近づくほどプロフェッショナルとしてのスキルが高いとされる。未経験レベルは「レベル1に達していない」という位置付けである。

年収が最も高い職種はマーケティング

 ITエンジニアの回答結果を基に算出した全職種の平均年収は502万円、平均年齢は38.3歳である(表1)。前回(2015年)の500万円から若干増加した。

表1 職種別、スキルレベル別の平均年収と平均年齢
マーケティングは700万円超
表1 職種別、スキルレベル別の平均年収と平均年齢
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 職種別に見ると、最も平均年収が高いのはマーケティング(710万円)。コンサルタント(673万円)、プロジェクトマネジメント(607万円)が続く。この3職種は平均年収が600万円を上回る。前回まで、最も平均年収が高い職種はコンサルタントだった。IT分野でマーケティングの役割が高まっていることがうかがえる。

 最も平均年収が低いのはアプリケーションスペシャリスト(451万円)で、ソフトウェアデベロップメント(452万円)が続く。

 スキルレベル別では、平均年収が最も高いのはプロジェクトマネジメントのレベル6(796万円)、次がセールスのレベル5(724万円)。この2レベルは、平均年収が700万円を超えている。

 平均年収600万~700万円未満をスキルレベル別に見ると、ITサービスマネジメントのレベル4が4年ぶりに600万円台に戻った。必要とされる専門領域が変化している一つの表れとみなせる。

 平均年収が最も低いレベルはアプリケーションスペシャリストの未経験レベル(342万円)。ソフトウェアデベロップメントの未経験レベル(343万円)が続く。プロジェクトマネジメントやITスペシャリスト、ITサービスマネジメントの未経験レベルも400万円を下回っており、スキルレベルの高低による年収格差がより拡大していると言える。