ユーザー目線に立つために、筆者が日ごろ実践している行動習慣について紹介します。それは、「ユーザーに会う機会を増やす」「ユーザーとの共通点を見つける」「一瞬の表情変化を見逃さない」の3点です。順に解説します。

ユーザーに会う機会を増やす

 ユーザーのもとに足を運ぶことが極めて有効だ、と前述しました。しかし、「ユーザーのもとに足を運べといわれても、用事がないのに行けない」と思うかもしれません。そう思うのは無理もないでしょう。ユーザーが忙しくしているところに出向いて挨拶をしても、「何しに来たの?」と言われてしまいます。そのときに「特に用事はないのですが」と答えれば、「今忙しいから」と迷惑がられて終わりです。

 そこで、筆者が経験上有効だと実感している「ユーザーに会う機会を作る言い回し」を五つ挙げます。それは「(a)ユーザーを褒める」「(b)頼りにする」「(c)ユーザーのメリットを示す」「(d)他部署のトラブル事例を引き合いに出す」「(e)他部署の好ましい事例を紹介する」です(図3)。

図3●ユーザーに会う機会を作る言い回しの例
図3●ユーザーに会う機会を作る言い回しの例
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 (a)ユーザーを褒めるとは、ユーザーの立場を尊重し褒めることです。例えば、「部長から誰よりも業務に詳しいと紹介されました」と伝えた上で、ぜひ話を聞かせてほしいとお願いします。その際、1回目は時間を短めに設定すると会いやすくなります。会うことができたら、その打ち合わせで「では資料を用意しておきます」というようにエンジニア側の宿題を作っておくと、次回のアポイントを取りやすくなります。

 (b)頼りにするも、(a)ユーザーを褒めると同様に、ユーザーの立場を尊重することによって協力的な姿勢を引き出すことです。もしあなたが別のエンジニアから「自分はまだ十分に理解できていません。○○さんが頼りです。教えてくださいませんか」と真剣に頼まれたら、無下に断われないでしょう。ユーザーも同じ。頼りにされることは、会うことの動機付けとなるのです。

 何かしら手土産があれば、それが会う口実になります。(c)ユーザーのメリットを示すとは、相手にとっての手土産を用意することです。例えば「協力してくださったら、そちらの部署をパイロットとして優先対応させていただきます」のような具合です。ただしメリットを反故にすると関係が決裂しかねません。そのため、本当に約束できることに限ることが必要です。

 (d)他部署のトラブル事例を引き合いに出す、(e)他部署の好ましい事例を紹介する、はどちらも先述した手土産の一種です。ユーザーが興味を示す情報を提供すれば、積極的に時間を割いてくれるでしょう。