ネットワーク技術者、ネットワーク管理者としてステップアップしたい──。そんなとき、自分の知識レベルを計るために有効な手段となるのが資格試験です。

 ネットワークの世界で名の知れた資格試験としては、経済産業省が行っている情報処理技術者試験の一つである「ネットワークスペシャリスト試験」があります。情報処理技術者試験はIT系では唯一の国家試験です。企業によっては、資格を取得した従業員に対して報奨金や手当を出すところもあり、月給がアップする可能性もあります。

ネットワーク村で抜群のステータス

 情報処理技術者試験の中で、ネットワークの最高レベルの知識を問う「ネットワークスペシャリスト試験」は、抜群の知名度とステータス性を誇るわけです(図1)。しかしそれは、あくまでネットワークの世界、狭いネットワーク村の中での話です。すべての会社の人事部長がそれを理解してくれているわけではありません。理解している可能性はむしろ低いでしょう。苦労して難易度の高い資格を取り、意気揚々と人事部に報告に行ったら「それ何の資格ですか?」と言われた──。これは決して珍しい話ではありません。

図1●ネットワーク村では抜群のステータスを誇る
図1●ネットワーク村では抜群のステータスを誇る
ネットワークスペシャリスト試験は経済産業省が行う情報処理技術者試験の1つ。ネットワークの世界(ネットワーク村)では知名度とステータス性が抜群に高い。
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 やみくもに資格を取得すればそれで主任に昇格できた幸せな時代はすでに遠くに去りました。試験勉強は決して面白いものではありませんし、時間や費用も投入しなくてはなりません。コストパフォーマンスを考慮して、最も自分の価値を高める試験を選択することが必要です。

自分にとって必要な試験を選ぶ

 ネットワークスペシャリスト試験だけがネットワーク技術者向けの試験ではありません。シスコシステムズが実施する試験であるCCNAやCCNPなどもあります。これはベンダーが認定している民間資格です。両者を比べると、ネットワークスペシャリスト試験はいわゆる「お勉強」的な試験で、ベンダーの試験は通信機器の操作方法まで踏み込んだ実践的な試験といえます。試験に優劣があるわけではありませんが、ネットワークに関する知識量を示したいのであればネットワークスペシャリスト試験が、実務スキルの高さを示したいのであればベンダー試験が向いているでしょう

▼資格試験
一般的なIPネットワークの構築や運用といった仕事は、何か資格や免許を取得しないとできないわけではないので、狭義の「資格」ではない。知識やスキルを計る“認定”を、ここでは“資格”として解説する。
▼経済産業省が行っている
実際に試験を実施するのは、経済産業省所管の独立行政法人である情報処理推進機構(IPA)。
▼CCNAやCCNP
CCNAはCisco Certified Network Associateの略。エントリーレベルの資格で、中規模ネットワークの導入、設定、運用、トラブル対応の能力を問われる。CCNPはCisco Certified Network Professionalの略。CCNAの上位資格に当たる。
▼向いているでしょう
かつては、「情報処理技術者試験はあくまで国内の資格なので、海外で活躍したければ多国籍企業が展開するベンダー資格のほうがよい」といわれていた時期もあった。現在では、情報処理技術者試験はIT人材の育成・評価のための枠組みである「共通キャリアフレームワーク」と接続され、自分が世界的に見てどのくらいのレベルの技術者であるかが計れるようになっている。ネットワークスペシャリスト試験は、情報処理技術者試験のなかでも難易度の高い「高度試験」の1区分。これは共通キャリアフレームワークの「レベル4」に該当する。「自社内で地歩を確立した中堅以上の技術者」というイメージだ。