残業を無くし、ブラックIT現場から抜け出すための工夫は多彩だ。発想力豊かな事例を紹介していこう。初めは、メンバーの主体性を引き出す「マイル」制度と、ユーザーの声を活用する工夫である。

事例1
脱ブラックの主体性引き出す「マイル」獲得競争
NECソリューションイノベータ 中村裕之氏らのチーム

 残業漬けでブラックIT現場と化すのを防ぐには、当事者であるチームメンバーに「残業を無くすぞ」という主体性を持ってもらうことが不可欠だ。NEC ソリューションイノベータの中村裕之氏(プラットフォーム第二事業本部 第二ブロードバンドシステム事業部 グループマネージャー)らのチームは、前向きに取り組みやすい指標を設定し、メンバーの主体性を引き出した。

 中村氏らが設定した指標は大きく2種類ある(図3)。一つは個々のメンバーが目指す指標。例えば「月初に計画した残業時間と実績の差」「前月と比較しての残業の削減時間」などがある。もう一つの指標はサブチーム単位で目指す指標だ。「月初の計画通りに全員が退社した回数」「定時退社の回数」などである。

図3●指標を使って段階的に残業を減らす
図3●指標を使って段階的に残業を減らす
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 ユニークなのは、チーム独自のポイント制度「マイル」を、各指標の達成状況に応じて付与する点だ。半期でより多くのマイルを獲得したメンバー、サブチームには商品券をプレゼントする。「残業削減に前向きに取り組め、楽しく競い合える」と中村氏は話す。

残業が減らなくてもプラス評価

 残業が減らなくてもプラス評価になる指標もある。月初に計画した残業時間と実績の差という指標だ。たとえ残業が減らなくても、計画と実績の差が少なければ高得点のマイルを与える。

 その理由は「計画的に仕事を完了する意識を高めるため」(中村氏)だ。残業ゼロを目指すには、計画通りに業務をこなすことが大前提と考えた。

 事実、月初の計画通りに業務を完了できるメンバーが増えるにつれて、残業削減のアイデアも出てくるようになった。あるサブチームからは、「他のメンバーの記念日を全員で支援する」というアイデアが出た。チーム全員で業務を手伝うことで、記念日当日のメンバーは必ず定時で退社できる。こうした仕組みの結果、改善前と比較し、チームの月間平均残業時間を3~4割近く減らした。