IT活用で新たなビジネスを生み出すチャンスは、ユーザーにもSIベンダーにもある。日本パレットレンタルは自社の強みである「物流機器管理」をサービスとして事業化。富士通は社内ベンチャーで開発したAIチャットボットを2017年11月に販売開始した。両社の事例から、「自社の強みを見極める」「ユーザーと一緒に試行錯誤する」というデジタルビジネス立ち上げのコツが見えてきた

モノをなくさないノウハウ売る

 970万枚に上る物流機器パレットの貸し出しを手掛ける日本パレットレンタル。パレットにはRFID機能が組み込んであり、倉庫や店舗に設置したリーダーで読み取る。パレットのありかが分かるので、「一般に70%程度といわれる回収率を大きく上回る99%を実現している」(日本パレットレンタル ICTサポート部の黒岩暁 ICTサービスグループ長)。

 同社はRFIDから集めたデータを分析しパレットの回転率などを把握し、レンタル業務の効率化を図っている。こうした物流機器管理の仕組みをソリューションとしてSaaS提供するビジネスを同社は生み出してきた。黒岩グループ長は「モノをなくさず、最大限回すノウハウをお金に変えている」と話す。

レンタル事業を起点に物流機器管理サービスへ発展させた
レンタル事業を起点に物流機器管理サービスへ発展させた
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 「Logiarx(ロジアークス)」と呼ぶソリューションは、パレットやカゴ車、プラスチックコンテナなどの個体管理が可能で、様々な業種で利用されている。

 イオングローバルSCMは90万台ある台車に適用し、台車のありかを見える化すると同時に、長期滞留店舗へ回収を促すといった施策につなげた。「ある引っ越し会社は、荷物にRFIDタグを貼り、オフィス移転業務の進捗管理や紛失防止に役立てている」(黒岩グループ長)。

 ソリューションを導入する際は、顧客の悩みを聞いたうえで、システムを設計。ダッシュボードにどういった指標を出せば役立つかといったコンサルティングも請け負う。「IT部門のメンバーは営業社員に同行し顧客の話をよく聞く」と黒岩グループ長。同社では顧客を巻き込み、新たなサービスの創出に向けた試みを始めている。