デジタル化に舵を切るデジタルシフトが花盛りだ。新聞、雑誌に「デジタル」の文字が踊らない日はなく、「デジタル推進室」なる特攻チームを立ち上げる企業は後を絶たない。日本列島デジタル一色といった様相。開発現場はどうなっているのか。
カタログ通販を手掛ける千趣会は、この10月からECサイトのリニューアルに取り組んでいる。
カタログ通販からECへ消費者の購買行動が移るなか、これまでもECの強化に取り組んできた。ただ、「関連部門でECのスキルやリテラシーがバラバラだったり、カタログ通販の延長でECサイトをデザインしたりと、必ずしもECに最適化できていなかった」(千趣会 EC企画開発部の野崎伸重 部長代理)。
そこで、開発やUI/UX、データ分析といった関連する人材を集めてEC企画開発部として一本化。EC強化に向けてギアを一段上げ、アクセルを踏み込んできた。
サイトのリニューアルでは、アマゾン・ドット・コムや楽天といった大手ECサイトを手本にした。「EC各社のデザインや操作性などはよく似ている。こうしたデファクトと乖離しているという仮説で自社サイトを見直し、異なる部分をキャッチアップしていった」(野崎部長代理)。
その上で、商品検索機能や在庫照会機能などを改善。「リニューアル効果で前より見やすく、使いやすくなり、コンバージョン率も上がっている」(同氏)と効果が出ている。今後はWeb接客ツールの採用や、AIによるログ解析などを推し進め、よりマーケティング力を高める考えだ。
目的は「利益を増やす」
デジタルシフトに期待を寄せるユーザーは多い。一方で、デジタル化を試みたもののPoC(概念検証)に疲れてしまった例も少なくない。デジタルシフトへの過剰な期待が一因である。
AI(人工知能)やIoT(Internet of Things)を入れて一丁上がりという簡単な話ではない。米Uberや米Airbnbを追ってビジネスモデル作りに挑むのもありだが、多くの企業にとってデジタルシフトは、ITによる改善を極めるのに等しい。
千趣会の例で分かるように、デジタルシフト一番の狙い目は、顧客接点を厚くするエンゲージメントである。ITを駆使して顧客をつかみ、「利益を増やす」のが目的だ。